「街」視点で考える湾岸タワマンに住む選択 東京の街での生活を楽しむなら下町がいい

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谷中の南西部にある根津には1900年前に日本武尊(やまとたけるのみこと)が創祀した古社でツツジの名所の根津神社があります。その周辺には多くの飲食店が集まっており、私も学生の頃、ずいぶんお世話になりました。

不忍通りと言問通りの交差する「根津一丁目」の交差点を中心に、多くの飲食店が建ち並んでいます。古くからの老舗飲食店や居酒屋と並び、お洒落なワインバルやイタリアンなどが程よく混在し、呑兵衛にとってははしご酒処に事欠かない街です。

千駄木は下町というよりも下級武士の「街」なのですが、森鴎外や夏目漱石ら文豪が居を構えていた街でもあります。ここも最近ではカフェやレストランが古民家などを改装して居を構えるようになり、雰囲気のよい街となっています。

タワマンvs.下町、住むならどっち?

なおこの谷根千を歩くと、タワーマンションやビルがほとんどないことに気づきます。そしてそれがまたこの「街」を豊かな表情にしているように感じます。

下町のよさとはそこに暮らす人々の息遣いや人情を感じたり、昔ながらの商店や飲食店を愛で楽しんだりすることにあると思います。築地の話題でも触れましたが、「街」を味わうにはそれが平面的に展開されていることが大前提となります。

『街間格差 オリンピック後に輝く街、くすむ街』 (中公新書ラクレ)書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

一方で、タワマンのような高層建築物では、人は上下に移動しなければならなくなります。人は平面を歩くことはできますが、飛ぶことはできません。したがって階段やエレベーターを使うことになるのですが、いずれも建物内で移動中に目にできる範囲は極めて限られたものになります。ところが徒歩なら、「街」そのものが自然と目に飛び込んできます。

今回は、「タワマンと下町、住むならどちらか」という極端な比較ではありましたが、あくまで「東京の『街』での暮らしを楽しめるのはどちらか」ということであれば、それは断然下町でしょう。例えば日常を通じて、活気ある店先に立つ人々や道端の花壇、歩き回る野良猫と触れ合う。東京が持つ温かみは、実はそういったところにあるような気がしています。

なお下町に住むのなら、工場街のようなところより、商店街のような多くの人々が出入りする「街」がずっとおすすめです。きっとそこにはよそ者を温かく迎え入れようという空気が流れているはずだからです。とくに谷根千のように低層の古い建物が連なり、人が行き交う「街」には、幸せな時間がゆるやかに流れているように思われてなりません。

牧野 知弘 不動産事業プロデューサー

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まきの ともひろ / Tomohiro Makino

1959年生まれ。東京大学経済学部卒。ボストンコンサルティンググループなどを経て三井不動産に勤務。J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て独立。現在はオラガ総研代表取締役としてホテルなどの不動産プロデュース業を展開。また全国渡り鳥生活倶楽部株式会社を設立。代表取締役を兼務。著書に『不動産の未来』『負動産地獄』『空き家問題』『2030年の東京』(河合雅司氏との共著)など。

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