「街」視点で考える湾岸タワマンに住む選択 東京の街での生活を楽しむなら下町がいい

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一方、現在の東京で、タワマンタウンの対極に近いイメージにあるのが、中央区築地、台東区谷中、文京区根津などに広がるいわゆる“下町”かもしれません。

中央区の明石町で育った私は、大学時代を築地、社会人になってからは入船で暮らしました。そういった意味で、実質的な故郷は築地界隈といえると思います。

築地は東京を代表する下町の1つです。中央卸売市場があったことから、業者が売買する市場の印象が強いですが、隣接して「場外」と呼ばれる商店街があり、こちらは一般の人が買い物できる場所として今も繁盛しています。

築地界隈もマンションが建ち並ぶ

かつてはこの場外とは別に、築地6丁目から7丁目にかけて、地元客を相手にした商店が多くありました。下町らしく魚や野菜、惣菜や肉を売る威勢のいい声が、そこかしこに響きわたっていました。幼い頃の私は夕方、母の手に引かれてこの商店街でその日の買い物をしたものです。

そんな人情味あふれていた築地界隈も、今では多くのビルやマンションが建ち並んでいます。あの頃足を運んだ酒屋も文房具屋もみなビルに建て替えられ、グルメな観光客を目当てとした飲食店が増えました。

築地の市場跡地について、現在のところ国際会議場を核とした再開発構想が発表されています。低層部などには「築地ブランド」の商店やレストランが誘致されるかもしれませんが、長くこの地で暮らしてきた立場からすれば、まがい物でしかありません。

そこで生きる人々の息遣いが感じられないのなら、それはいつまでも本当の「街」になりえないと思います。下町の代表格、築地はこの先どうなるのでしょうか、個人的にはとても心配をしています。

もちろん都内には築地以外にも魅力あふれる下町が多くあります。例えばJR日暮里駅の南西に広がるエリア、具体的には台東区谷中の「谷」、文京区根津の「根」、そして同じ文京区の千駄木の「千」を取って「谷根千(やねせん)」と呼ばれ、外国人観光客を含めて人気を博しています。

谷中はJRの駅前から谷中霊園が広がるなど寺が多い「街」です。谷中霊園は都立の霊園でその面積は約10ヘクタールに及びますが、その歴史も古く、徳川第15代将軍慶喜や渋沢栄一、横山大観などの著名人のお墓があることで有名です。周辺には古くからの民家やアパートが点在していますが、最近では古民家を改装したカフェや雑貨店、レストランが増え、街中を歩く人の数が増えました。

そこに「HAGISO」という築60年の木造アパートを改装したカフェやギャラリーなどが入った文化複合施設があります。この中に「hanare」というホテルのエントランスが設けられているのですが、客室はそことは別の古民家になっており、「街」そのものを平面で活用する試みが行われています。またお寺に多い猫をテーマにしたカフェやグッズを置くお店も多く、好きな人にはたまらない「街」になっています。

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