「ビアードパパ」意外と知られていないその全容 創業20周年、海外へは14カ国約190店舗進出
さて、同社の展開において不思議なのが、海外店舗の多さだ。アジア圏を中心に、国内とほとんど変わらないぐらいの店舗数を広げている。これにはどういった意図があるのだろうか。
「アメリカとシンガポールの直営店のほかはすべてフランチャイズです。地域ごとに置いたエリアマスターの元でそれぞれフランチャイズを行ってもらっている形です。日本の食文化やスイーツはアジアで非常に高く評価されています。
若干高い所得層がメイン層になっており、価格も現地の相場から考えて、日本より高めの設定にしています。その層の人口が今増えつつあるということが、アジアで広がっている理由の1つですね」(杉内氏)
海外展開でも国内と変わらないクオリティを提供
海外展開の第1号は、2001年にオープンした香港店。国内での展開を拡大する時期に、すでに海外へも歩を進めていたことになる。その後もスピーディに広がっている理由としては、オペレーションのシンプルさが第一に挙げられる。パイシュー生地は工場で作り、店舗で焼き上げるという方式をそのまま海外でも採用している。クリームも専用の機械で作ることができるため、国内と同様の品質を確保できるのだという。
日本のスイーツも、工場で作った焼き菓子をそのまま販売するような店舗はあるが、作りたてというのはほかになく、同社の大きな差別化につながっている。ただ、味覚の違いへの対応はどうしているのだろうか。
「生地やクリームについては、味を変えて出したいという要望もあることはあります。でも、当チェーンそのままの味を大切にしてくれるところと契約を結んでいます。定番商品については世界共通。ただ、個々のローカルな味については、中身のフレーバーで提供いただくのはOKとしています」(杉内氏)
そのなかでも最もローカル色が強いものと言えば、ドリアンシューだろう。ドリアン風味のシュークリームは日本人には想像がつかないが、東南アジアの広い地域で、欠かせないフレーバーの1つであるようだ。また、海外のローカル味が日本にフィードバックされたものもある。先に挙げた「恐竜の卵」の生地は、シンガポールで人気の商品をヒントに開発されたものとのことだ。
以上のように、安定した定番商品に加えて、コラボや話題性の高い商品づくりで若年層の掘り起こしに力を入れる一方、ある程度基盤がしっかりした海外展開が、同チェーンの今後の戦略になっていくようだ。
また、最近グループのブランドに加わった「吉祥菓寮」も反響が大きく、今後の広がりが期待されているという。吉祥菓寮は江戸時代までルーツをさかのぼることができる京都の老舗、「京都吉祥庵」が展開する店舗。
麦の穂と2018年10月に合併することで、同グループの傘下に入った。素材にこだわったきな粉や、本わらび100%のわらび餅が同社のスイーツの特徴となっている。京都内に、飲食できるカフェ形式の店2店舗、ギフトショップ3店舗を展開しているが、杉内氏によると、来年2020年には東京でのオープンを予定しているそうだ。
この新たな動きが、同社のメインであるビアードパパのチェーンにどう影響してくるのか。例えば現在も、年配の世代を意識し、月替わりの商品には、和の風味を取り入れた商品を年に1〜2回採用しているという。「吉祥菓寮とのコラボ」がもし実現すれば、話題になりそうだ。
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