「ビアードパパ」意外と知られていないその全容 創業20周年、海外へは14カ国約190店舗進出

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「ところが一方で、広いスペースを確保できないという問題があります。店舗での洋菓子づくりでいちばん手間がかかってスペースをとるのが生地の製作過程。そこで、生地は大阪にある工場で作り、焼き上げる工程は店舗で行っています。これにより、狭い店舗スペースでも作りたてのフレッシュな商品を提供できます」(杉内氏)

同チェーンを運営する、麦の穂・代表取締役社長の杉内健吉氏(筆者撮影)

店舗での焼き上げ、そして注文を受けてからクリームを詰める実演販売方式は、同チェーンのパイシューのおいしさとも直接関係している。ふつうシュークリームはその名のとおりシュー生地にクリームを詰めたもの。シューは薄力粉、卵、バターなどを混ぜて練り、焼いて膨らませた生地だ。一方、同チェーンでは、パイ生地を使用した皮を採用。

アップルパイのような一般的なパイ生地は練った“たね”を、凍らせたバターを挟みながら何重にも折りたたみ、焼いてつくる。薄い生地が幾重にも重なり、間に空気が挟み込まれているから、独特のサクサクという食感が生まれる。

しかし、これだと、かじったときに生地が細かく割れてこぼれてくるので、シュークリームの皮としては食べにくい。

ビアードパパでは、サクサクとした口当たりを生かしながら、食べやすさも確保した「練り込み型」の生地を独自に開発。また焼き上げ工程で温度や湿度にも工夫することにより、シューの内側はもっちりしているのに、外側は時間が経ってもベタつかず、サクサク食感をキープできる生地に仕上げている。

「さっくりしているのがビアードパパのシュークリームの特徴。湿度によってサクサク感が失われてしまうので、その日に焼き上げた生地を使うことが大切です。直前までクリームを詰めないのは、水分を吸って食感が変わってしまうためでもあります」(杉内氏)

話題性を重視した企業とのコラボレーション

そんな、変わらない味を20年届け続けてきた同チェーンであるが、最近、ちょっとした変化も起きている。ユニークな季節限定商品や他社とのコラボ商品を次々に繰り出すなど、商品戦略において話題性・イベント性をより強く打ち出すようになってきているのだ。

一例として、3月には明治の「チェルシー」バタースカッチ味とコラボした限定商品を発売。20代など若い層では知らない人もいるというが、40〜50代には強くアピールするおやつとのコラボレーションで、非常に反響が高かったという。

一番人気は右端のカスタードクリームのパイシュー(170円)。そのほか季節や月ごとに限定商品が発売され、店頭には4〜5種類が並ぶ(筆者撮影)

また、4月1日には「永谷園のお茶づけシュー(250円)」を発売する予定とのエイプリルフールリリースを発信するなど、SNSなどを意識した話題作りも。

「商品のバリエーションが増えてきたのは、やはりグループ化後ですね。定番のカスタードのパイシューがいちばん売れますし、実際会社としてはこれが多く売れるほうがありがたい。

ただ、今の時代、おいしいというのはすでに当たり前です。選ばれるためには、『新しいものがある』『食べたときの感動や驚き』『もう1個食べたいと思う』などが必要。そのために季節商品などを取り入れています」(杉内氏)

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