BNPパリバのスペランザ氏「世界景気は減速」 「不透明感の長期化」で投資が抑制されている

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――ドイツは独り勝ちで経常黒字が積み上がり、かつ財政黒字です。一方、イタリアやスペインではEUの財政規律への不満が大きく政権も不安定です。欧州全体としてEUの共通予算の拡大、財政統合の強化といった改革はできるのでしょうか。

その点について、私は楽観視している。国の数が多いので、時間はかかってしまうが、合意はできると思っている。ドイツが保有している超過貯蓄を使って南欧の国の赤字を吸収するということは可能だ。債務危機以降に財政健全化のためにルールを厳しくしたが、債務危機以前にはやっていたことだ。EUの一元的な財政当局を設置して財政出動を可能にすることも、できると思う。ただ、時間がかかるので、その間は金融政策に負担がかかってしまう。

――ドラギ総裁は在任期間中の金融政策の正常化を断念した形ですが、次の一手として金融緩和を迫られた場合に、打つ手がないのでは?

フォワードガイダンスを出して、金利の据え置きを長期に続けるというメッセージを出すこと、QE(量的緩和)の再投資期間を長期化することによって、金融緩和効果を発揮できる。あまり長くなりすぎ場合は、日本が採用したような金利の階層方式の導入でマイナス金利を続けることもできる。QEの再開もありうる。ただし、QEの効果は出にくくなって、無理をすると規模が大きくなってしまうという問題がある。

EUに対する支持は戻りつつある

――ユーロ圏については、5月に欧州議会選挙もありますね。各国で右翼的な政党が勢力を伸ばすなど、EUに再び遠心力が働く可能性はいかがでしょうか。

欧州のポピュリズムはグローバリズムに対する恐怖の表れだ。グローバリズムによって不平等が拡大したという考えが広がり、ユーロ懐疑派が増える原因になった。しかし、これは過去のものになりつつある。各国の世論調査を見ると、EUに対する支持が戻りつつある。イタリアの連立政権も反EU的な発言をしなくなっている。

――欧州のインフレ率について注意すべき局面とのことでした。日本では非正社員の賃金などは人手不足で上がっていますが、結局、正社員の給与はあまり上がらず、物価全般の上昇にもつながっていません。

キーワードは「期待」だと思っている。欧州では最近、価格の変動率が下がっている。人手不足で賃金も上がっているし、コストも上昇しているのに、企業は価格に転嫁できない。値上げをすると売れなくなり、マーケットシェアを失うと思うからだ。これこそが「期待の要素」だ。インフレはインフレ期待の関数だが、インフレ期待はインフレに依存しているので、いったん低いインフレ率が長期化して、期待が低下して罠に落ちこむと、抜け出せなくなる。ただ、重要なポイントはユーロ圏では賃金の上昇が回復し、加速化していることで、日本化は免れると思っている。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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