「東映まんがまつり」29年ぶり復活の意外な背景 映像配信の進化がオムニバス作品の需要生む

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1990年には「東映まんがまつり」という呼称が使われなくなったが、その後も数本のアニメ作品を上映する「東映アニメフェア」として定期的に展開されていた。だがそれも2002年夏には終了。それからは、東映で制作されるほとんどのアニメ映画が単独で公開されるようになる。

ダンボール惑星を大冒険する『りさいくるずー』 ©2019東映まんがまつり製作委員会 ©coyote

くしくもDVDソフトが普及し始めた時期にも重なっており、パッケージ販売にも対応できるような作品づくりが必要とされていた側面もあったようだ。そして先述したとおり、今回の「東映まんがまつり」復活の背景には動画配信の普及があったという。まさに「東映まんがまつり」の歴史は、メディアの変遷に色濃く影響されているということがうかがい知れる。

次世代の人気作品を発掘できるチャンスにも

今回上映される「おしりたんてい」は、幼児から小学生低学年世代を中心に爆発的な人気を誇るアニメだが、子どもを持つ母親世代には『うちの3姉妹』の人気も高いようだ。

『うちの3姉妹』は子育て中のお母さん世代に人気だという ©2019東映まんがまつり製作委員会 ©松本ぷりっつ/主婦の友社

「とにかくお母さんたちがゲラゲラ笑うんですよ。だから『おしりたんてい』目当てに来た子どもだけでなくて、一緒に来たお母さんが見ても退屈しないようになっている」(森下会長)

このようなオムニバス作品の利点としては、当初期待していなかった作品の中に思わぬ掘り出し物を発見することがある。ある種、次世代の人気作品を選び出すショーケースとしての役割も期待されているわけだ。

「こればかりは上映してみないとわからないですが、この中から一本立ちできるような作品が生まれるといいですね。それこそ『ドラゴンボール』の映画版だって最初は『東映まんがまつり』から始まったんですから」と、森下会長は期待する。

今後、「東映まんがまつり」がどのように展開するのか、その行方にも注目したい。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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