服が語る「フリーダ・カーロ」凄まじい生き様 ブルックリン美術館の展示で見た光と影

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「見かけはあてにならない」という展覧会のタイトルどおり、絵の中のカーロが身に着けたスチール製の矯正具は、シースルーのテワナのガウンの下に隠れている。外科用のコルセットは後にキャンバスと化し、ハンマーと鎌が描かれた。

(写真:Rickey Rhodes/The New York Times)

服やコルセット、ジュエリーは2003年に、青の家のバスルームで発見された。カーロはこの家で生まれ、作品を制作し、苦しみに耐え、1954年に47歳で息を引き取った。

夫妻はこのフランス式の家を1940年代に増築した際、ファン・オゴルマンにアステカ族風の設計を依頼した。家は地元の石を使った彫像や張り子の置物、絵を描いたひょうたんなどで飾り、さまざまなペットを飼っていた。

展覧会では貴重な映像も公開されている。今回の目玉とも言えるカーロの1943年の自画像「Self-Portrait With Monkeys」に描かれた植物にインスピレーションを与えたと思われる、草木の茂った庭も映されている。

無名のメキシコ人画家らによる「レタブロ」

100万人近いカーロのインスタグラムのフォロワーなど、大勢の人々がこの作品のような自画像を目当てに展覧会を訪れるだろう。来場者にはぜひ、同室に展示されているほかの力強い芸術作品にも目を向けてほしい。カーロが収集した作品と似た、無名のメキシコ人画家らによる奉納画「レタブロ」がいくつも並んでいる。

それらは、突然降りかかる暴力や激しい痛みを伴う病を表現すると同時に、神への祈りも表している。ある作品は子どもを監獄から出してくれたことをタルパの聖母に感謝し、別の作品は自動車事故に遭った男性の命が救われたことで、三位一体の神をたたえている。どれも痛みを伴いながらも開放的な経済下で描かれた、苦しみと救済の作品だ。

作品を手がけた画家たちも、そうした作品を収集したカーロとリベラも知っていた。芸術は神話や商業活動よりもはるかに価値の高い仕事であると。

(執筆:Jason Farago、翻訳:中丸碧)
(C)2019 The New York Times News Services

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