岡村孝子さんが患う急性白血病はどんな病気か さまざまなタイプがあり治療法も細分化

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白血病治療の予後を規定するのは、骨髄性かリンパ性かという白血球のタイプ、さらにそれぞれにおいて遺伝子や染色体の異常に基づく分類だ。タイプによって治療法は異なる。

急性前骨髄性白血病(APL)というタイプの白血病がある。この白血病は初発時に出血を生じやすく突然死しやすいことが知られている。脳など重要臓器に出血すれば突然死することもある。2000年に亡くなった格闘家のアンディ・フグ選手はAPLだった。

かつてAPLは死の病だった。大野竜三・愛知県がんセンター名誉総長は論文において「APL患者が入院すると病室は血だらけとなり、野戦病院さながらだった」と振り返っている。

状況を変えた治療法

この状況を変えたのは、1988年に中国の上海第二医科大学の医師たちが活性型ビタミンAであるATRAを用いた治療を開発したからだ。ATRA単剤を23人の患者に投与したところ、22人が完全寛解(骨髄中の幼弱な細胞が全細胞の5%以下になること。白血病治療の成功の基準)となった。

その後、抗がん剤治療との併用が研究され、現在はAPLの無再発生存率は60~80%と高率に治癒が期待できるようになった。医学研究が白血病患者の予後を劇的に改善した一例である。

ただ、APLのような白血病は例外的な存在だ。いまでも成人の白血病の治癒率は高くはない。

成人の急性白血病は、8割を占める急性骨髄性白血症と残り2割の急性リンパ性白血病に大別できる。特定非営利活動法人「成人白血病治療共同研究支援機構(JALSG)」によると、急性骨髄性白血病の長期生存率は40%、急性リンパ性白血病は20%程度である。

いずれのタイプも治療では複数の抗がん剤を併用する。副作用は強く、脱毛・嘔気・倦怠感は必発である。池江選手がツイッターで「思ってたより、数十倍、数百倍、数千倍しんどいです」とツイートしたのは、このためだ。

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