岡村孝子さんが患う急性白血病はどんな病気か さまざまなタイプがあり治療法も細分化

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抗がん剤は白血病細胞だけでなく、正常な造血細胞も傷害するため、骨髄抑制を引き起こす。白血球、赤血球、血小板を作ることができず、赤血球や血小板の輸血、および感染症対策としてクリーンルームに入ることになる。閉鎖的な空間に長期間にわたって「拘束」されるため、心理的なストレスとなる。

白血病の治療が過酷なのは、治療が1回で終わらないことだ。最初に行う抗がん剤治療は、白血病細胞の量を減らし、完全寛解に導入することを目指す。ただ、1回だけでは白血病細胞を撲滅することができないことがわかっているため、強い抗がん剤治療を数回にわたり繰り返す。急性リンパ性白血病の場合は、飲み薬を持続的に服用することもある。この結果、順調にいっても治療が終了するまでには急性骨髄性白血病で半年から1年間、急性リンパ性白血病で1~2年間程度はかかる。

遺伝子や染色体情報を加味して治療は個別化

さらに、近年は遺伝子や染色体情報を加味して、治療は個別化されるようになった。

英国の医師たちが1998年に発表した多施設共同研究の結果では、t(8;21)と表記される染色体異常を有する急性骨髄性白血病患者の5年生存率は69%だったが、5番染色体が欠損しているタイプの急性骨髄性白血病の5年生存率はわずかに4%だった。

急性リンパ性白血病は、一般的に予後が不良だ。特に年齢が高くなるほど、治療成績は悪くなる。前出のJALSGが2002年に報告した研究では、フィラデルフィア染色体という予後不良因子がない急性リンパ性白血病患者の長期生存は30~49歳が32%だったのに、55~64歳は26%にすぎなかった。

近年、チロシンキナーゼ阻害剤という新薬が開発され状況は変わったが、フィラデルフィア染色体が陽性の急性リンパ性白血病は、5番染色体欠損の急性骨髄性白血病と同じく、長期予後は極めて不良だった。

このようなハイリスクタイプの場合には、地固め療法が終了するのを待ち、骨髄移植や末梢血幹細胞移植(本稿では以下、まとめて骨髄移植と記す)を行うことが多い。大量の抗がん剤や放射線を用いて、がん細胞を撲滅し、HLAという白血球の血液型があったドナーから採取した骨髄細胞を移植する治療である。本稿で詳述は避けるが、骨髄移植の方法は多様化した。ドナーソースとして骨髄バンクや臍帯血バンクも整備され、また、前処置に用いる薬剤を工夫し、かつて50歳が上限とされていた骨髄移植が60代でも可能になった。

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