アップル流「子どものやる気を最大化する」方法 情熱と才能が交わるスイートスポットを探せ

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失敗を悪いことだと捉えれば、何に対してもトップレベルに到達する人がほとんどいなくなる。私たちは、「失敗したらそれで終わり」と教わってきた。前に進むための一歩だとも、学習するうえで不可欠なことだとも教わってこなかった。人は、失敗してもなお学習しようとするのではない。失敗するからこそ、人は学習する。

アップルは、イノベーションを起こす企業として昔から知られている。だが、スティーブ・ジョブズは創業当初から、世間で噂されるアップルのイメージをほぼすべて覆すようなことを社員に求めていた。彼が求めたのは、過去を無視し、現状の枠を押し広げ、未来を創造することだった。

私は、子どもが学習中に犯した失敗を受け入れるだけでは十分ではないと思っている。失敗することを後押しすべきだ。

グリットに加えて必要な要素

モチベーションについて、最後にもう1つ言っておきたいことがある。

親や教師をはじめ、子どもを指導する立場にある人は、失敗は学習に不可欠なものであるということ、そして指導する側には子どもたちの失敗を受け入れて対処するだけの忍耐が必要だということを心にとめておいてもらいたい。

ウィンストン・チャーチルの言葉にもあるように、「われわれの可能性が解き放たれるカギとなるのは、強さでも知性でもない。たゆまぬ努力である」からだ。

ペンシルベニア大学の教授で心理学者のアンジェラ・ダックワースは、『GRIT やり抜く力』の著者として知られる。彼女が注目したのは、知性と成果の関係ではなく、認知能力でない部分の一人ひとりの違いに目を向け、それらが成功の予測因子となりうる可能性について研究している。そこから「グリット」という概念が生まれた。

ダックワースの定義によると、「グリット」とは目標を追い求め続ける粘り強さのことだという。そして、さまざまな調査結果から、「困難な目標の達成には、才能だけでなく才能を維持し使い続けることが必要だ」と結論づけた。つまり、どんなテストの点数より粘り強さのほうが、成功の予測因子として優れているということだ。

ダックワースの調査結果から、こんな疑問が浮かぶ。グリットは生まれたときに親から受け継ぐものなのか、それとも、教えられて身につくものなのか?

反論はあるものの、ダックワースは教われば十分に身につけることができると考えていて、いくつかの大規模な研究で実証を試みている。

これはこれですばらしいことだが、私個人としては、モチベーションの役割にもっと注目すべきだと感じている。

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環境によって遺伝子の発現の仕方が変わるように、グリットのような性格的な特徴も状況に左右される。グリットの場合は、特定の目標を達成したいというモチベーションがどの程度強いか、自己決定理論の言葉を使うなら、その目標を達成したい「理由」が重要だと私は考える。

このように、これからの教育には、子どもの情熱と才能が交わる「スイートスポット」を見つけやすくすること、学ぶことを愛する気持ちや内発的モチベーションを後押しして育むこと、子どものやりたいと望むことならどんなことでも成功する可能性があると信じることが欠かせない。

そうすることで、子どもに自信が生まれ、グリットや自主性が高まり、ひいては「学習」の効果も高まるだろう。

ジョン・カウチ アップルの教育部門初代バイス・プレジデント

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John Couch

カリフォルニア大学バークレー校大学院でコンピュータ科学の博士号を取得後、ヒューレット・パッカードに入社。1978年アップル入社。1984年に退社しサンディエゴの学校改革に乗りだす。2002年、アップルがデジタル世代に向けた教育改革を目標に掲げて教育部門を新設したことに伴い、再びジョブズに請われてアップルに戻り、同部門の初代バイス・プレジデントに就任。学習のパーソナライズ化を熱心に推進し、バラク・オバマ前大統領が始めた「NETP(教育テクノロジー導入計画)」や「コネクトED(教育現場におけるテクノロジー事情の改善を目的としたプロジェクト)」にアップルの代表として参加。

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