転職で大事なのは「スキルや経験」だけではない 自分がどのような「環境」を求めているのか

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スキルや経験面で「非常に優秀である」と、とある会社で評価された人が、ほかの会社でもその成功を絶対に再現できるという保証はまったくないわけです。

実際にトップレベルの学校を卒業し、戦略コンサル会社で非常に優秀だった人が事業会社に転職してまったく芽が出なかったケースや、その反対に事業会社や金融機関でエースと言われていた人材が、戦略コンサルではまったく使い物にならない、そういったケースは非常に多いのです。

最近でも、いわゆるプロ経営者と呼ばれる非常にすばらしい実績とキャリアを持っている方たちが、新たな場所では経営者として結果を出せずに終わるケースも頻繁に耳にするようになってきていると思います。

もちろんすべてのケースがそうだとは言いませんが、そういった事象に関しては多くの場合、その個々人の能力やスキルが劣っているということから起きたのではなく、そのスキルなりを存分に発揮できる環境にいなかったがゆえに、そういった結果に終わったということが考えられるわけです。

反対に、自分のできることと環境がマッチした会社を見つけることができれば、さらによいスキルや経験をどんどん身に付けていくことができるでしょう。

すでに4社を経験されている荻野さんにもぜひそういった視点でもって、どういった環境で自分は活躍できるのか、反対にどういった環境だとダメなのかを考えていただきたいのです。

荻野さんはこれまで業種は異なれども、営業という職種自体は一貫してきたわけですから、その中でご自身なりの営業のスタイルや考え方、さまざまな成功経験や失敗談をお持ちのはずです。

そういった過去の自分自身の職歴を振り返って、自分の強みや弱みを棚卸しをすることで、今後営業として何を強化し、どこを目指すべきなのかは自ずと見えてくると思います。

その中で「横展開できるスキル」を磨けばよいのです。

そして、そういった棚卸しや整理を経て目指す姿が見えさえすれば、後はいかに自分がスキル・経験を積みつつ、活躍できる場所や環境はどんなところか、仕事として長続きできる場所を探せるのかが、今後の結果を左右するといっても過言ではありません。

とはいえ、すべてが理想的な職場など存在しないでしょうから、自分にとっての働く場所としての優先順位を考えたうえで、相対的な判断を下す必要はもちろんあります。

「自分にとっての正解」を探し続けるべき

いずれにせよ、そういった荻野さんにとっての理想的な環境を探せるのであれば、今後一貫したキャリアや成功体験を通じていくらでも横展開するためのスキルの積み重ねはできるはずです。

荻野さんは、ベンチャーがよいか大企業がよいかを問うていますが、その質問に対する答えを出せるのは荻野さん自身しかいません。結局のところ、自分がどういった環境を求めるべきなのか、によるからです。

万人にとってのパーフェクトな職場や環境なんてものは存在しませんし、キャリアだって誰にとっても正解の道なんてものは存在しないのです。

自分自身の経験を踏まえて、「自分にとっての正解」を探し続けるべきですし、完璧ではないものを完璧に近いものに自らしていく、キャリアとはそういった完璧を求め続ける探求の道のりなのでしょう。

そのためには、自分自身との対話を通じて、自分が活躍できる場所、つまり自分のスキル・経験が存分に発揮できる場所を探すことが重要なのです。

荻野さんが今までの経験を通じて、今後のキャリアの発展に活かせる発見をし、新たな一歩を踏み出されることを応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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