「機動戦士ガンダム」が描いた人間たちの"矛盾" 知られざる安彦良和氏の「仕事」に迫る

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なお今年2019年は、ガンダムシリーズの原点『機動戦士ガンダム』放送開始(1979年4月7日)から40周年を迎える節目の年であり、さまざまな記念イベントの情報も出ている。ハリウッドでの実写映画化もすでに発表された(サンライズとレジェンダリー・ピクチャーズとの共同制作)。4月29日からはアニメ版『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』がテレビシリーズとしてNHK地上波で初放送される。

約20時間の取材を試みる中で、安彦氏にとって、アニメーター時代に『機動戦士ガンダム』の協同作業に参加した経験が決定的なものだったこと、それは私たちの想像以上に運命的な経験だったことを改めて確認することができた。実際に安彦氏は、アニメの世界と一度別れたあとも、『機動戦士ガンダム』を『THE ORIGIN』としてマンガ化し、さらにその一部をアニメ化してきた。『安彦良和の戦争と平和』で語られているように、『THE ORIGIN』の全体をアニメ化するという構想を温めているところである、とわかった。

戦後文化史に欠かせない作品

親子2世代、ひょっとして3世代のファンを獲得している『機動戦士ガンダム』の世界観は、もはや戦後文化史の重要な要素の一つとなっている。

『安彦良和の戦争と平和-ガンダム、マンガ、日本』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

「人と人はわかり合えない」は『ガンダム』のテーマである。実際に、人間の歴史は誤解や敵対の繰り返しであり、果てしない暴力と平和の螺旋だった。しかし、その中でなお「人と人がわかり合おうする」とはどういうことか?

優れたエンターテイメントでありつつ、歴史、政治、宗教、民族、アジア、革命などのさまざまな困難な問題に正面から対峙している安彦良和氏の作品は、私たちにあたかも、そのことを問い直すことを促しているかのようである。

これから、新しい世代の読者が安彦氏の作品に触れてくれればいい、そして安彦良和という巨大な存在の全貌が次第に明らかになっていけばいい、と考えている。

杉田 俊介 批評家

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すぎた しゅんすけ / Shunsuke Sugita

1975年、神奈川県生まれ。法政大学大学院人文科学研究科修士課程修了。文芸誌・思想誌などさまざまな媒体で文学、アニメ、マンガなどの批評活動を展開し、作品の核心をつく読解で高い評価を受ける。著書に『宮崎駿論』(NHKブックス)、『ジョジョ論』『戦争と虚構』(作品社)、『長渕剛論』(毎日新聞出版)、『無能力批評』(大月書店)、『非モテの品格』(集英社新書)などがある。

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