矛盾を抱える米中貿易交渉も初夏には妥結する 選挙モードで成果を急ぐトランプ大統領
4月中旬から、米中貿易交渉が終盤に差し掛かっていることを示唆するアメリカ政府高官のコメントが相次いでいる。そうしたポジティブなコメントを発しているのは、主にスティーブン・ムニューシン財務長官やラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長など米中貿易戦争の市場への影響を懸念する自由貿易推進派だ。したがって、やや市場に配慮したバイアスがかかっている可能性はある。
これまでも繰り返し交渉期限が延長されてきた経緯もあり、トランプ大統領と習近平国家主席が合意文書に署名する首脳会談日程が確定するまでは予断を許さない。一方で、2020年大統領選の選挙サイクルが今夏あたりから本格化するため、大統領によるトップダウンの早期妥結圧力が高まる状況にある。米中貿易交渉は間もなく合意に達する可能性が高いと見てよいのではないか。
交渉は大幅に進展も最後の詰めで難航か
4月15日、ムニューシン財務長官は米テレビ局フォックスビジネスのインタビューで、米中合意内容を履行する「施行メカニズム」について両国が基本合意に至ったことを明らかにした。過去、中国の貿易慣行を改めるとした米中合意を中国政府が履行してこなかったという事実があるため、今回の交渉でアメリカ政府が特に重視しているのが、施行メカニズムであった。よって、この進展は極めて重要だ。この他、為替操作を防ぐために設ける為替の章についても「基本的に完成している」と同長官は語った。
翌16日にはクドローNEC委員長も、施行メカニズムの他、知的財産権侵害や強制技術移転の問題、関税・非関税障壁の協議で注目に値する進展があったことを述べた。
ムニューシン財務長官によると、米中貿易協定は7章の構成で150ページにも及ぶという。米政府高官の限られた人物の間で合意文書が作成された関係で、現在、実務レベルで両国が内容を詰める作業に時間がかかっているとも言われている。だが、通商交渉では最大の懸案事項が最後まで残るのが常であり、最後の案件で交渉が難航している可能性もある。
全米商工会議所の国際部門責任者のマイロン・ブリリアント副会頭も、4月2日の記者会見で米中貿易交渉は90%が合意に至っているが、最も難しい残り10%は交渉中であるとした。強制技術移転、知的財産権侵害、国有企業(SOE)改革、施行メカニズム関連で既存の追加関税の撤廃の方法や時期の問題など、両国の考えは乖離している部分もある模様だ。なお、既存の追加関税については、いったん撤廃した後も、合意内容に違反した場合は元に戻す案などが検討されているという。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら