矛盾を抱える米中貿易交渉も初夏には妥結する

選挙モードで成果を急ぐトランプ大統領

トランプ政権が2020年大統領選に向けて最も重視するのが再び接戦が見込まれるラストベルト(さび付いた工業地帯)での雇用だ。そのため、企業のロビー活動ではラストベルト4州(ミシガン、オハイオ、ペンシルベニア、ウィスコンシン)の雇用拡大について政権にアピールすることが効果的だということが業界関係者の間で暗黙の了解となっている。中国の「買い物リスト」として、これら4州の対中輸出品目をリストアップし、各社は政権に提出しているという。

関係筋によると、商務省は1兆ドルを超える規模の中国のVIEを準備していると言われている。中国が年間2000億ドル規模の追加輸入を5~6年間ほどコミットすることを協議しているという。2018年12月、ムニューシン財務長官も中国政府が1兆2000億ドル規模の輸入拡大で協力する意向を示したことを明かしている。

だが、問題はその規模を達成するほど米国側の輸出品目が揃っていないことだという。2018年のアメリカの対中輸出実績は約1203億ドルにすぎないので、年間2000億ドル規模で中国が追加輸入する場合、3倍近くの大幅な対米輸入拡大策となる。商務省がハイテク産業に対し、アジアにある工場からではなく、米国工場から輸出するようサプライチェーンの再構築まで要請した例もあるという。つまりトランプ政権は掲げている貿易赤字縮小の数値目標達成のために、企業に非効率な生産体制を要請しているというのだ。

中国の報復関税、農畜産品から工業品にシフトか

トランプ政権は2018年に年初の洗濯機と太陽光パネルに対するセーフガード、次いで通商拡大法232条に基づく追加関税、さらに通商法301条による追加関税を発動してきた。これらに対し、中国政府はトランプ大統領の支持基盤が多く従事している農畜産品を標的に報復関税を発動してきた。

米中貿易戦争の長期化はアメリカの農畜産業に多大なダメージを与えている中、同業界からはトランプ政権に対し救済措置の追加や米中貿易交渉の早期妥結を求める声が相次いでいる。アメリカの農畜産業は、各国の232条(鉄鋼・アルミ)追加関税に対する報復措置にさらされているうえ、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)や日EU(欧州連合)経済連携協定(EPA)EPA(日EU〈欧州連合〉経済連携協定)の発効によって対日輸出競争力も失いつつある。

アメリカが既存の追加関税を撤廃せず、中国もその報復関税を解除しないシナリオでは、トランプ政権は中国が対米報復関税の対象を農産品から工業品にシフトするよう要請しているという。したがって、貿易交渉の行方次第では、アメリカから中国への輸出を行っているメーカーの一部品目は中国の報復関税の対象となるリスクも生じうる。

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読売新聞主筆として93歳の今も、社論をまとめる要の役割を果たしている渡邉恒雄氏。安倍首相と定期的に会食するなど、なお政治のキーマンでもある。歴代の首相を知る同氏は現在の政治とメディアをどう見ているのか。本誌編集長がインタビュー。