大胆予測!2025年に起こりうる金融の大変革 フィンテックを軸に描く近未来ストーリー
ソフトバンクとヤフーが出資してできたペイペイ(PayPay)も現在では生活全体のプラ ットフォームと化しており、鈴木さんがウィワークを通じて受注したクリエイターとしての仕事への報酬の受け取り、参加したイベント代金の支払いもキャッシュレスでペイペイによって行われています。最近ではウィワークを通じた入金が多いことから、家賃支払いも独自通貨「ペイペイコイン」によって自動引き落しで行っています。鈴木さんが先月東南アジア3カ国に出張に行った際には、ペイペイはアリババのアリペイとも連携して使えるので現地でも便利に過ごすことができました。
2025年4月時点では、鈴木さんのように特定の会社という組織にとらわれずに、自分の強みや個性を活かしてフリーランスとして働く人が増えています。それは自分の強みや個性を活かすという価値観が日本でも重視されるようになってきたことと、リアルなつながりとデジタルなつながりで仕事が提供されるテクノロジーが進化してきたことによるものです。
鈴木さんは先日、市谷から四谷に引っ越しました。現在はフリーランスとして働いている自分が、大企業に勤めていたときに借りたところから、もっとよい条件のところに引っ越しできるか不安でしたが、「信頼スコアバンク」という制度によって問題なく入居を果たすことができました。中国のアリババグループが提供する信用スコアサービス「ジーマクレジット」は日本でも2018年ごろから話題になっていましたが、日本では日本の文化や特性に沿ったかたちで、「似て非なる」サービスとして進化してきました。
中国のシステムが人の信用への監視型・統制型モデルとも見られていたなかで、日本のシステムはあくまでも人の信用への人の信頼の補完型モデルです。例えば鈴木さんがマンションを借りるケースで言うと、鈴木さんの収入やフリーランスという形式的基準だけではなく、鈴木さんが日常的に有している周りからの「信頼」をスコアとして点数化し、形式的基準を補完する仕組みとなっているのです。
学歴、勤務先、年収といった「信用」よりは、その人が本当に持っている「信頼」が重視されるようになってきており、人が本来大切にしてきた価値や価値観で生きることが金融テクノロジーによって可能になってきたのです。従来型のキャリアパスを重ねる人がいる一方、鈴木さんのように同時にいくつものキャリアをこなす人が増えてくると、自然な結果として、会社の名前や会社での肩書よりは、自分のあり方や、仕事に対するやりがいの方がより重要になってきています。
実際にさまざまな人が集まる交流会などでは、働いている会社の名刺だけではなく、自分が社外でやっている活動での名刺を出す人も増えてきました。まさに会社の名前や会社の肩書よりは、自分のライフスタイルやワークスタイルが重要になってきているのです。人が1人ではなく社会の中で生きていくために最も重要なことは信頼であり、お金はそれを円滑にしていくための手段ではないかと思います。そして2025年における新たな社会においては、一人ひとりの個性や強み、その人のライフスタイルやワークスタイル、そして信頼という本来最も重要な価値が評価される、新たな金融システムが稼動しているのです。
近未来予測に込めた思い
これは、私が2025年4月に起きていることを予測するとともに、金融サービス提供のあり方については、「こんなふうになっていてほしい」「こんなふうにあってほしい」という希望を込めた近未来ストーリーです。
実際には、冒頭の近未来予測ストーリーとは大きく異なり、アメリカ金融機関による逆襲や中国の金融ディスラプターの上陸によって、2025年4月の日本の金融産業は、さらに過酷な状況になっているかもしれません。
現実は人々が望むように物事が進むわけではありません。だからこそ、金融・経済・経営の近未来予測には、ベースケース、ベストケース、ワーストケースの3つのシナリオ予測が不可欠なのです。もっとも、閉塞感の強くなっている現在の日本において最も重要なことは、最悪のシナリオに備えながらも、きちんと「こんなふうになっていてほしい」「こんなふうにあってほしい」というベストケースシナリオをイメージしておくことだと思うのです。
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