メガバンクの先を行くシンガポールDBSの凄み 世界一のデジタルバンク、知られざる正体

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世界最高のデジタルバンク、DBS銀行とはどのような銀行なのでしょう。DBS銀行は1868年にシンガポール政府系の開発銀行として設立されました。現在は、東南アジア(シンガポール・インドネシア)、グレーター・チャイナ(中国・香港・台湾)、南アジア(インド)など18の国・地域に280以上の拠点を構え、グループの従業員数は約2万4000人です。

銀行事業は、持株会社 DBS Group Holdings Ltd. の下、シンガポールとインドをカバーするDBS銀行、中国・香港・台湾・インドネシアそれぞれをカバーするDBS銀行の各現地法人によって行われています。

DBS Group Holdings Ltd. はシンガポール証券取引所に上場しており、時価総額は約642億シンガポールドル(約5兆2770億円、2019年3月11日現在)です。シンガポール政府が所有する投資会社テマセク・ホールディングスやその他金融機関など20社ほどが全体の9割以上の株式を保有しています。

具体的なサービスに目を転じると、リテールバンキング、資産運用管理やプライベートバンキング、中小企業バンキングやコーポレートバンキング、証券仲介、保険など広範に及んでいます。

規模を見ても、東南アジア最大です。法人顧客20万社以上、個人顧客880万人以上をベースに、総資産5180億シンガポールドル(約42兆8000億円)、売上高119億シンガポールドル(約9800億円)、当期純利益43.9億シンガポールドル(約3600億円)、預金量3736億シンガポールドル(約30兆7800億円)を誇ります。

経営陣が掲げた3つの標語

優良な銀行そのものにも見えるDBS銀行が、テクノロジー企業をベンチマークし、デジタルトランスフォーメーションに着手したのは2009年のことです。変革をリードしたのは2009年に入社したグプタCEOと、その前年に入社したデビッド・グレッドヒルCIOです。DBS銀行は、デジタルトランスフォーメーションに際して、実に印象的な3つの標語を掲げました。

「会社の芯までデジタルに(Become digital to the core)」
「自らをカスタマージャーニーへ組み入れる(Embed ourselves in the customer journey)」
「従業員2万2000人をスタートアップに変革する(Create a 22,000 start-up)」

「会社の芯までデジタルに」とは、オンラインサービスやモバイルサービスを提供するといったフロントエンドの表面的なデジタル化にとどまらず、バックエンドの業務アプリケーション、ソフトウェア、ミドルウェア、ハードウェアやインフラのレベルまで、さらには経営陣・従業員のマインドセットや企業文化まで、例外なく見直すことを意味しています。

「自らをカスタマージャーニーへ組み入れる」とは、銀行としての自身の存在意義を問い直す中で、次世代金融産業においてどのようなプレーヤーになるのかといったビジョンを示す言葉です。

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