メガバンクの先を行くシンガポールDBSの凄み 世界一のデジタルバンク、知られざる正体
端的にいえば、それは預金・貸し出し・為替といった銀行目線のトランザクションジャーニーから、ユーザー1人ひとりのライフスタイル、生活パターン、ニーズに寄り添う顧客目線のカスタマージャーニーへの転換を意味します。
DBS銀行はまた「簡単、シームレス、目に見えない(simple, seamless, and invisible )」というコンセプトも提示しました。カスタマージャーニーの中で顧客はシンプルにしてシームレスなサービスを享受する。そこにおいてDBS銀行は顧客の「目に見えない(invisible )」存在になろうというのです。
そして「従業員2万2000人をスタートアップに変革する」。会社の芯までデジタルにするには、経営陣・従業員のマインドセットも変えなければなりません。トランザクションジャーニーからカスタマージャーニーへと発想を転換する必要があるのです。DBS銀行はそのために社内ハッカソンや、スタートアップへの出資や買収を通じて、新たなマインドの養成、取り組みを進めました。
「目に見えない銀行」として顧客に入り込む
以上のデジタルトランスフォーメーションを進めるに当たり、これまでに2つのフェーズがありました。第1フェーズは2009年から2014年、第2フェーズは2014年以降です。
第1フェーズは、デジタルバンクを構築するための基礎を固める時期でした。銀行システムの脆弱性を解消するためにデータセンターを増設し、セキュリティーオペレーションセンターやモニタリングセンターも設置しました。エンジニアリングやテクノロジーのアウトソース依存からの脱却に積極的に取り組み、現在85%の内製化が実現しました。
またチャンネル、プロダクト・サービス、イネーブラー(経営情報システムなど社内のシステムやインフラ)ごとに不必要なアプリケーションを売却し、必要なアプリケーションを購入することによって、2014年までにデジタルバンクになるためのインフラやプラットフォームを構築しています。
第2フェーズは、全社的にデジタルバンクを構築する時期でした。「プロジェクト型組織からプラットフォーム型組織へ」「アジャイルな開発チームの編成」などのテーマで組織改革を進めました。
あわせて、「クラウド・ネイティブになる」「プロダクトやサービスの市場投入を格段に加速する」「APIによってエコシステムのパフォーマンスを上げる」「データ・ドリブン、カスタマーサイエンス、計装と実験に基づく顧客第1主義を徹底する」「人とスキルに投資する」といった具体的な目標を定めました。
そして2018年5月、DBS銀行は「銀行を意識することなく、生活を楽しもう」というミッションを採用しました。これは10年以上掲げてきた「アジアとともに生きる、アジアとともに躍動する」を進化させたものです。「自らを破壊する」ことによって、「目に見えない銀行」として顧客のカスタマージャーニーに入り込むことを明確に示したのです。
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