中国人が山ほど金使う「日本観光」の残念な実情 富裕層を取り込む「グルメ・ツーリズム」とは

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こうしたニーズの高まりを受けて、近年では「グルメ+温泉(+聖地巡礼)」のオーダーメード型富裕層旅行が少しずつ広まっている。

筆者は主催者の1人であるAさんに話を聞いた。今年34歳のAさん自身は日本ファンで、訪日中国人の若者の典型例である。Aさんは中国の大手企業で勤務している。

Aさん夫婦は両家の親からもらった計2億円の不動産を持っていて、2人の会社員としての年収は合わせて800万円ぐらいの「プチ富裕層」である。

小さい頃からおいしいものを食べて口が肥えており、食べるのが大好きだ。また、「スラムダンク」「名探偵コナン」などの日本のアニメファンでもある。

数年前から日本に来るようになり、日本語は片言だが、ネットで予約可能な日本のミシュラン星付きレストランに行ったり、アニメの聖地巡礼を1人で満喫してきた。そして、食べログ大賞という情報を知った後、日本に住んでいる友人に頼み、受賞レストランを予約してもらい、その予約日に合わせて来日するようにしていた。

そして、食事・観光・聖地巡礼の感想を中国の個人旅行ガイド(旅行攻略)サイトや微博(中国版ツイッター)に寄稿したところ、多数の友人から「私もこういう旅行をしたかった! 連れていってほしい!」と依頼された。そこで、友人らを対象に、友達旅行の感覚で8人程度のスモールツアーを主催するビジネスを始めた(中国では兼業・副業について寛容的だ)。

・少人数(2~8人)
・地方のみ
・本当においしいレストラン
・日本人でさえ知らない秘湯

というテーマで、年3~4回来日している。ツアー参加者のほとんどは、年収500万元(約8200万円)以上であり、40代以下が多い。

10万円の料理にも「お得感」を感じる中国人富裕層

中国人富裕層の多くは、時間の融通が利き、レストラン・旅館の予約日に合わせて旅行することが可能である。彼らは、欧米旅行も楽しんでいるが、中国人観光客に知られていない本当の日本グルメ、温泉(秘湯)を堪能することで、他人との差別化体験ができ満足感が高い。さらに、体験者の口コミにより、中国人富裕層の間で日本の地方への関心がますます高まっているようである。

Aさんが企画するのはグルメと秘湯をめぐる典型的な旅行だが、季節によって内容も違う。例えば、今年の五一休み(中国では5月1日はメーデーで休日だ)にあわせて来日する旅程では、まだ桜が残っているかもしれない北陸、甲信、そして関東(具体的には金沢、和倉、富山、立山黒部、山梨、東京)を回る予定である。兼六園、金沢21世紀美術館など観光スポットを見学し、「花嫁のれん」の観光列車に乗る。日本人観光客と変わらない日程である。1人1泊3万円以上の旅館に泊まる予定だという。

また、旅のメインである食事は、食べログ大賞ブロンズ、シルバー、ゴールドやミシュラン星付きレストランのみを訪れる予定で、食事代は1人1食1万5000~5万円である。参加者は日本の自然の美しさに触れ、癒やされる。また、日本でなければ絶対食べられない料理であれば、たとえ1食10万円であっても、「お得感」を受けるようだ。

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