三菱UFJ社長「チャレンジする人材を評価する」 4月就任の三毛兼承・新社長が語る新戦略

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2つ目は「実行」だ。これまでのMUFGは、計画は綿密だが、具体的な行動が十分でないと批判されてきた。これからは実践、実行第一で意思決定していく。例えば、70%の完成度でも、リスクを十分に考慮して可能であれば実行していく。

三毛兼承(みけ・かねつぐ)/1979年慶應義塾大学経済学部卒業。同年、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。国際部門担当の副頭取などを経て、2018年4月から三菱UFJ銀行頭取。2019年4月から三菱UFJフィナンシャル・グループ社長を兼任(撮影:尾形文繁)

3つ目は「デジタライゼーション」だ。デジタライゼーションの方向性は2つある。今までにない新しいサービスや体験、価値を提供するという方向性と従来のサービスをより便利で低コストに提供するという方向性だ。

前者には情報信託のようなサービスがある。後者は、支店に行かなくても、手続きや取引ができるものを目指している。いつでもどこでも銀行と接点を持つことができる。(銀行との接点となる)デバイスはスマホやタブレット、将来的にはスマートスピーカーのようなものになるかもしれない。

いずれにしても、私たちが取り組む変革は従来の延長線上にはないものばかりだ。想定していないようなチャレンジもあると覚悟している。

【記者の視点】デジタルを用いた新規サービスの創出は、各銀行共通の課題となっている。主戦場となってくるのは決済と情報銀行だ。決済の分野では3月にみずほFGが「Jコインペイ」をリリースした。地銀約60行を巻き込み、加盟店開拓を進める。MUFGもおなじくQRを用いた決済サービス「コイン」を2019年中にリリース予定だ。
情報銀行については、MUFGが一歩先をいっている。傘下の三菱UFJ信託銀行で情報信託サービス「DPRIME」の実証実験を2018年8月に開始。11月にはβ版の試行もはじまっている。GAFAのようなIT企業が個人情報を無料で収集し、ビジネスを展開する中、個人が個人情報を蓄積・管理し、情報を提供するのにふさわしい対価が得られるようなサービスを目指している。
この2分野には銀行だけでなく多くの異業種も参入を始めている。異業種も含めた争いはますます加速することになる。

銀行へのニーズは「手続き」と「相談」

ーー銀行業は今後どのような形に変化していくのでしょうか。

(消費者が)一般的に銀行に行くニーズは2種類あると考えている。1つは手続き、もう1つは相談のニーズだ。この2つを分けて考える必要がある。

銀行や金融は経済活動の血流に当たる。その血流を順調にまわすための手続きは不可欠だが、(消費者にしてみれば)簡潔に、便利に終わって欲しいものだ。そういうニーズはデジタル化で対応する。今までは通帳や印鑑を持って店舗に行かなければならなかったものが、デバイスを通じてインターネットでできるようになる。

一方、何かあった時の相談という面ではコンサルティングに特化した店舗を展開していく。日中の混雑した店舗ではなく、静かで時間的に余裕のある中でじっくり相談ができるようになる。

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