三菱UFJ社長「チャレンジする人材を評価する」 4月就任の三毛兼承・新社長が語る新戦略

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ーー今後の買収や資本政策の方向性は?

買収を進める中で、資本規律を重視してきた。価格を気にせず買うということは今後もしない。商業銀行については、アジアにおけるフランチャイズは完結したと考えている。(タイの)アユタヤ銀行や(インドネシアの)バンクダナモンのような(買収額が数千億円)規模の買収はもうない。

買収先として考えられるのは、アセットマネジメント(資産運用)とインベスターズサービス(機関投資家向けビジネス)の分野だろう。2年前、三菱UFJ信託銀行の池谷幹男社長が「1兆円程度の買収をしたい」と宣言した。実際、三菱UFJ信託銀行は2018年10月にオーストラリアのアセットマネジメント会社の買収を発表したが、この分野は今後も買収の可能性があると考えている。

もう1つの方向性は、既存のビジネスに補完的な案件や既存ビジネスを高度化できる案件だ。ドイツの航空機ファイナンスがいい例だ。航空機ファイナンス自体は従来から手がけていたが、買収先企業のポートフォリオは航空機ファイナンスの中でもわれわれが手がけてこなかった部分だった。

今後はポートフォリオの採算性を重視

これまではバランスシート(総資産)の拡大を意識してきたが、外貨流動性などを考慮した際、ポートフォリオの採算性を重視しなければならなくなっている。

低採算のアセットをリスク許容範囲内で、より高いリターンのアセットに入れ替えていくことは不可欠だ。これからも適した案件があれば買収の対象になってくる。

【記者の視点】MUFGはこれまで、メガバンクの中でもっとも順調に規模を拡大し続けてきた。アメリカのユニオンバンクやタイのアユタヤ銀行といった買収案件が功を奏し、顧客部門の海外収益比率は4割を超える。2018年10月に買収したオーストラリアのアセットマネジメント会社や、今年3月に発表したドイツの航空機ファイナンス(資産の買収)など、拡大は継続している。
買収によりバランスシートが300兆円を超える中、今後はその「質」が求められるようになる。前社長である平野信行会長が進めてきたアメリカのモルガン・スタンレーとの提携関係をどうするのかを含め、買収企業のマネジメントは同社の課題だ。
三毛氏は米州本部長を務めたほか、アユタヤ銀行と三菱UFJ銀行の現地拠点の統合に携わるなど、海外経験も豊富。平野氏が「修羅場を明るく乗り切る」と評する三毛氏の手腕が問われることになる。
藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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