「子どもは褒めて育てる」を実践する人の誤解 極めて特殊な成功体験に魅了されるのはNGだ

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その後、ミューラー教授らは、同じ子どもたちに、かなり難しめのIQ テスト(2回目)を受けさせました。

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さらにその後、最初に受けたのと同じ程度のIQ テスト(3回目)を受けさせ、結果の推移を調べました。すると、もともとの能力を褒められた子どもたちが、成績を落としてしまったのに対し、努力を褒められた子どもたちは成績を伸ばしたのです。

褒め方の違いは、子どもたちの取り組み方にも影響を与えました。「頭がいいのね」ともともとの能力を褒められた子どもは、2回目の難しめのIQ テストを受ける際、この試験のゴールは「何かを学ぶこと」ではなく、「よい成績を取ること」にあると考え、テストでよい点数が取れなかったときには、成績についてウソをつく傾向が高いこともわかったのです。

褒めるときは具体的な内容を挙げる

また、彼らは、よい成績が取れたときはその理由を「自分に才能があるからだ」と考え、同じように、悪い成績を取ったときも「自分に才能がないからだ」と考える傾向があることもわかっています。

一方、「よく頑張ったわね」と努力した内容を褒められた子どもたちは、2回目、3回目のテストでも粘り強く問題を解こうと挑戦を続けました。努力を褒められた子どもたちは、悪い成績を取っても、それは「(能力の問題ではなく)努力が足りないせいだ」と考えたようです。

子どもを褒めるときには、「あなたはやればできるのよ」ではなく、

「今日は1時間も勉強できたんだね」
「今月は遅刻や欠席が1度もなかったね」

と、具体的に子どもが達成した内容を挙げることが重要です。そうすることによって、さらなる努力を引き出し、難しいことでも挑戦しようとする子どもに育つというのがこの研究から得られた知見です。

中室 牧子 慶応義塾大学総合政策学部教授

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なかむろ まきこ / Makiko Nakamuro

1998年慶応大学卒業。米コロンビア大学で博士号取得(Ph.D.)。日本銀行や世界銀行での実務経験を経て、2013年から慶応大学准教授、19年から現職。専門は教育経済学。

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