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「子どもは褒めて育てる」を実践する人の誤解 極めて特殊な成功体験に魅了されるのはNGだ

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  • 中室 牧子 慶応義塾大学総合政策学部教授
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「ご褒美」と子どもの出席率や学力の因果効果について、ハーバード大学のフライヤー教授は、約250校、小学2年生から中学3年生までの約3万6000人もの子どもに対して大規模な実験を行いました。

このフライヤー教授の研究を理解するには、子どもの教育成果の分析に用いる最も標準的な分析枠組みである「教育生産関数」を知っておくと便利です。これは、別名「インプット・アウトプットアプローチ」とも呼ばれ、授業時間や宿題などの教育上のインプットが、学力などのアウトプットにどのくらい影響しているかを明らかにしようとするものです。

2種類の実験

教授が実施した実験は2種類ありました。1つ目の実験は、学力テストや通知表の成績という「アウトプット」がよくなれば、ご褒美を与えるというものです。そして、もう1つの実験は、本を読む、宿題をする、学校に遅刻せずに出席するなどの「インプット」がきちんとできれば、ご褒美を与えるというものです。

この2種類の実験のうち、子どもたちの学力を上げる効果があったのは、インプットにご褒美を与えるほうでした。とくに、数あるインプットの中でも、本を読むことにご褒美を与えられた子どもたちの学力の上昇は顕著でした。一方で、アウトプットにご褒美を与えられた子どもたちの学力は、意外にも、まったく改善しませんでした。

「1時間勉強したら、勉強が終わった後にお小遣いをあげるよ」
「テストでよい点を取ったら、お誕生日にお小遣いをあげるよ」

これは同じようにみえて、まったく異なる2つの作戦なのです。前者は、「1時間勉強する」というインプットに「お金」というご褒美を、勉強が終わった「すぐ後」に与えるというものです。

一方、後者は「テストでよい点を取ったら」というアウトプットに対して、今すぐではなく少し先の「お誕生日」にご褒美を与えます。功を奏するのは、アウトプットではなくインプットに対して、遠い将来ではなく近い将来にご褒美を与える前者のやり方なのです。

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【子どもは褒めて育てるべきなのか?】

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