「子どもは褒めて育てる」を実践する人の誤解 極めて特殊な成功体験に魅了されるのはNGだ
「子どもは褒めて育てるべきなのか」。これも、私が友人からよく受ける相談です。友人によると「褒め育て」という子どもたちの自尊心を高めるような育児法が、多くの人に支持されているそうです。試しに「褒め育て」を推奨している育児書を読んでみると、「子どもを褒めて育てると、自分に自信を持ち、さまざまなことにチャレンジできる子どもに育つ」という趣旨のことが書いてありました。
自分に自信を持つ、言い換えれば自尊心を高めること。これはとても大切なことのように思えます。心理学の研究では、自尊心が高い生徒は、教員との関係が良好で、学習意欲が高く、実力に見合った進路を選択する傾向があることが指摘されています。
直感的にも、子どもの自尊心が低いと、教員との関係がうまく築けなかったり、学習に対して意欲が湧かなかったり、自分の実力を過小評価して進路を選択してしまう、というのはどれも正しいように思えますので、「褒め育て」が一定の支持を集めているのもうなずけます。
むやみやたらに「褒める」のはNG
しかし、「あなたはやればできるのよ」などと言って、むやみやたらと子どもを褒めると、実力の伴わないナルシシストに育てることにもなりかねません。とくに、子どもの成績がよくないときはなおさらです。ただ、私は子どもを褒めてはいけないといっているわけではないということは、ここであらためて強調しておきたいと思います。重要なのは、その「褒め方」なのです。
「よく頑張ったわね」
この2つの褒め方のうち、どちらが効果的だと思いますか? コロンビア大学のミューラー教授らは、ある公立小学校の生徒を対象にして「褒め方」に関する実験を行いました。
6回にわたる実験でわかったことは、「子どものもともとの能力(=頭のよさ)を褒めると、子どもたちは意欲を失い、成績が低下する」ということです。
ミューラー教授らは、子どもたちをランダムに2つのグループに分けました。両方のグループの生徒がIQ テスト(1回目)を受けましたが、1つのグループの生徒に対しては、テストの結果がよかったときには「あなたは頭がいいのね」と、子どもたちのもともとの能力を称賛するメッセージを伝えました。一方もう1つのグループに対しては、「あなたはよく頑張ったわね」と、努力を称賛するメッセージを伝えました。
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