タモリというお笑いの巨人が持つ圧倒的な凄み 平成を駆け抜けた「いいとも!」の最後に見た

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もちろん、報道機関としてのテレビ、気晴らしとしてのテレビは今後も存在し続けるに違いないのだが、ここで言う「テレビ」とはそういう意味ではない。数千万人規模の大衆がそれだけを求め、心を奪われ、酔いしれる。そういう意味での「テレビ」はこれで最後なんだな、というふうに感じられたのだ。

華やかでにぎやかな「祝祭」としてのテレビ、「楽しくなければテレビじゃない」のテレビは、あのときに大団円を迎えたのだと思う。

自由になったタモリ

「いいとも」はフジテレビの、そしてテレバラエティの精神的支柱のような存在だった。その後、フジテレビでは「SMAP×SMAP」「ごきげんよう」「とんねるずのみなさんのおかげでした」「めちゃ×2イケてるッ!」など、歴史を彩った長寿バラエティ番組が次々に終了していった。

一方、タモリというタレントにとっても「いいとも」終了は重大なことだった。「いいとも」が終わることでいよいよタモリのタレント生命にも限界が見えてくるのではないか、という説もあった。何しろ終了時点でタモリは68歳という高齢である。メインの仕事だった「いいとも」を失ってしまえば、そこからさらにタレントとして飛躍するのは難しいのではないかと思われていた。

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しかし、いざ蓋を開けてみれば、それは杞憂にすぎなかった。「いいとも」が終わった後、タモリは今まで以上にのびのびと好きなことに打ち込む活動を始めた。長期休暇を生かしてプライベートでも妻と豪華客船クルージングに出かけていることなどが報じられた。

また、過去に何度かレギュラー放送されていた「ブラタモリ」は2015年から毎週放送されるようになり、どの回も高視聴率を記録している。むしろ「いいとも」という枷が外れたことで、タモリ自身はますます活発で自由になっているようにも見える。32年続いた「いいとも」でさえも、タモリという巨人を彩るほんの1ピースにすぎないのである。

ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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