タモリというお笑いの巨人が持つ圧倒的な凄み

平成を駆け抜けた「いいとも!」の最後に見た

ダウンタウンの松本人志は「われわれもほら、とんねるずが来たらネットが荒れるから」と言っていた。昔からダウンタウンととんねるずは不仲であるとか共演NGだと噂されていたため、それを自らネタにしたのである。

ここで誰もが予期していなかった事態が起きた。ダウンタウン、ウッチャンナンチャンに続いて、とんねるずが乱入してきたのだ。石橋貴明は開口一番「なげーよ!」と噛みついた。

さらに、爆笑問題、ナインティナインもそこに加わり、タモリ、さんま、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、とんねるず、爆笑問題、ナインティナインの7組が同時に出ているというテレビ史上初の光景が展開されることになった。

一流芸人たちの「あうんの呼吸」

のちに芸人たちがラジオ番組で明かしたところによると、松本が「とんねるずが来たらネットが荒れる」と発言した瞬間、楽屋のテレビでそれを見ていた石橋が乱入を決意して、マネジャーに「(木梨)憲武に行くぞって言え」と声をかけた。連絡を受けた木梨も「行く」と即答した。石橋は着替えて準備を終えると、爆笑問題、ナインティナインにも声をかけて、一緒に乱入することにした。

この経緯を振り返ると、松本と石橋が一流芸人ならではのあうんの呼吸で無言のやり取りをしていたことがわかる。松本は「ネットが荒れる」発言でとんねるずを誘い込んだ。そして、石橋がいち早くそれに勘づいて、誘いに応じることにしたのだ。

先輩であるとんねるずが出ていくと言えば、爆笑問題とナインティナインはそれに従うしかない。この2組もそれぞれにダウンタウンとは遺恨があると噂されているのだが、そんなことを構っていられる状況ではなかった。こうしてテレビ史上初の、そして恐らく最後の超豪華共演が実現したのである。

この共演劇が感動的なのは、松本と石橋のやり取りがほとんどの視聴者に気づかれることなく暗黙のうちに行われていた、ということ。そして、お互いが利害や対立を超えて「番組を盛り上げる」という目的のために動いたということだ。

このような奇跡的な共演が実現した裏にあるのは、タモリという人間の人徳だろう。タモリという媒介がなければ、彼らが共演することは決してなかったはずだ。この瞬間、タモリがお笑い界を1つにつなげたのである。

当時、私は「グランドフィナーレ」を見ていて、一視聴者としてこのうえなく興奮も感動もしたのだが、心の片隅でふと「あっ、これはテレビ自体の最終回なんだな」と気づいてしまった。

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