ポスト工業化社会の組織マネジメントとは?

書評:『組織を強くする人材活用戦略』(太田肇著)

「DISCO」という5つの視点

今の日本は、よく「ゆでガエル」とたとえられるように、工業化社会における常識から長らく脱却できずにいる。結果、多くの企業の業績は伸び悩み、企業を支える従業員のモチベーションも一向に上がらないままだ。

『組織を強くする人材活用戦略』では、著者の太田肇・同志社大学教授が、凋落した日本企業を再生させるには何が必要か、ポスト工業化社会の時代にマッチした組織とは何かを追求し、新たな人材活用戦略と組織マネジメント法を提案している。その具体策は、それぞれの頭文字を取って「DISCO」という独自の5つの視点で展開される。

まずは第1章。企業を取り巻く環境は複雑化、多様化する一方なので、個人の意欲や能力を活かすような組織の「differentiation(分化)」が重要であると述べている。

工業化社会では、同じような知識、技能、経験を持ったいわゆる「サラリーマン型の社員」が主役だった。そして、彼らが集団で一糸乱れぬ規律の下で働くのが理想的なチームワークだった。

しかし、IT化、ソフト化が進んだポスト工業化社会では、コンピュータでは代替できない独創性や勘、判断力、交渉力といった「知恵」や高度な技術を用いて、まとまった仕事を単独もしくはチームでこなせる人材が必要になるという。わかりやすくいえば、自発的なモチベーションを有する自営業者や職人タイプの「プロ型社員」である。

プロ社員の協働化こそがチームワーク

さらに、プロ型社員が協働することこそが、今後のあるべきチームワークだと著者は主張する。たとえば、家を建てる際には、大工、左官、電気工業事業者など専門家たちが見事なチームワークを発揮する。あるいは、専門分野の異なる技術者や研究者たちが、所属組織の枠を超えて開発プロジェクトに携わるケースも珍しくない。今後、こうした働き方がさらに増えてくるため、企業は組織を異能集団にシフトするべきだと論じている。

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