ポスト工業化社会の組織マネジメントとは? 書評:『組織を強くする人材活用戦略』(太田肇著)
そのためには、特定の分野を子会社化したり、カンパニー制を採るなどの方法が有効であるとしている。最近では、2012年に社内のカンパニーを分社化したリクルートなどがいい例だ。また、雇用形態や働き方の多様化および異質化などにも言及しており、ダイバーシティ推進の大切さもあらためて理解できるだろう。
第2章では、プロ型社員を育成すべく、社員に「independent(自立)」を促す策を解説。社内独立制度や独立支援の例を挙げながら、動機づけや管理法について説明している。著者は今後、「昇進できなければ転職・独立する」、あるいは「今の会社で成長できなくなったときには転出する」という慣行が草の根的に広がるとみており、「定年時に帳尻を合わせる人事」から「短期に清算する人事」への切り替えは、避けて通れない課題だと指摘する。雇用される側としては厳しい未来かもしれないが、結局はそれがモチベーションを引き出すためにも、ダイバーシティを推進するうえでも必要なのだという。
第3章では組織のタテ方向の「simple(単純)」化を、第4章では組織のヨコ方向の「chaotic(乱雑)」化について説明。組織および評価のフラット化や権限移譲を推進する一方、個人が個性を発揮しやすくするためにキャリアや就業形態は多元化することを勧めている。
仕事も評価もオープンに
そして第5章では、社員の意識が外に向くような物理的・心理的な方策をはじめ、管理職の外部採用や、仕事も評価もオープンにする人事の必要性などを説き、「open(開放)」化の手法を紹介している。
公務員を経て、30年間、組織や個人のマネジメント研究を続けてきた著者。本書は、国内外でのさまざまな企業取材をベースに、著者が考える改革の実現可能性についても複数の経営者たちにヒアリングしたうえで執筆されているため、企業が参考にすべき点は多いだろう。
また、希望退職者を募る企業が増え、「追い出し部屋」や「解雇特区」なども話題に上る昨今。安定雇用が保障されない時代に、個人が今後どのような心構えで働くべきかということを考えるのにも適した1冊ではないだろうか。
(撮影:梅谷秀司)
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