日本で「子どもは2人まで」宣言が出ていた衝撃 1974年実施の「少子化推進」が残す深い禍根

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高度経済成長期を支えた家族という世帯中心の消費構造は、独身5割・一人暮らし4割のソロ社会では大きく変わらざるをえません。個人化する社会とともに訪れるのは、個人化する消費です。

大量生産・大量消費時代は、一家に一台の消費体系でした。車、テレビ、エアコン、電話、掃除機など、世帯で所有し、世帯員たる家族でその使用をシェアしていたわけです。

しかし、今ではたとえ家族同居であっても、エアコンやテレビは1部屋1台、電話も1人に1台の時代になりつつあります。単身世帯化が進めば、炊飯器や電子レンジ、掃除機、洗濯機、冷蔵庫といった家電領域も1人1台の時代となります。

「人と人のつながり」が価値化する

「人口減少によって消費が伸び悩む」と言う人がいますが、そうとは断言できません。むしろ逆で、実は、単身化が進めば進むほど、消費の個人化によって、需要が拡大する市場が生まれます。

外食費は1家族以上!独身男は『よき消費者』だ」の記事でも紹介したように、食費の領域では、すでにソロの消費支出が一家族分以上実額で超えている事例も多いのです。レジャーやエンタメ市場も拡大すると予想します。私の調査では、すでにソロの8割近くがソロ旅を好み、5割が音楽フェスにはソロで参加しています。映画館に関しては、ソロは1人で行くことのほうが当たり前になっています。

個人化する社会とは、個々人がバラバラに動き、互いに関与しない社会ではありません。むしろ、個人と個人が「接続する」ことによって活性化する、いわば「ソロ活経済圏」が生まれてくるはずです。

4月に上梓した『ソロエコノミーの襲来』には、本記事で紹介した「少子化は政府が推進」「高齢者より独身者が多い」というような「知っているつもりで知らなかった事実」を多数掲載しています。そして、来るべきソロ経済社会への向き合い方についても記しています。それは同時に、新たなコミュニティーへの向き合い方にも通じます。

今まで人々の安心の拠り所であった、地域や職場や家族といった共同体は失われ、個人が流動的に動き回らざるをえない社会になるのは確実です。それにより、人との関係性も「群から個」へ、「集団の中の私」から「私がつながる世界」へと変わらざるをえなくなるでしょう。それは結婚した者とて例外ではありません。誰もが必ずいつかはソロに戻る可能性があります。

とはいえ、ソロ社会とは絶望の未来ではありません。むしろ、個人化する社会だからこそ、「人と人のつながり」が価値化していく。そして、そういう価値化を提示できたところがソロエコノミーにおける勝者となるのではないでしょうか。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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