国税庁はなぜ「節税保険」にとどめを刺したのか 契約した中小企業経営者は金融庁に「恨み節」

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こうした保険は年間の保険料が数百万円にのぼる場合もある。その分が全額、税務上の損金扱いとなり、10年後に解約すれば、80%以上の保険料が戻ってくる。受け取った保険料は雑収入となり課税対象となるが、退職慰労金や設備投資など、課税所得を打ち消せるだけの費用があれば節税効果は高くなる。病気に関する簡単な告知をクリアすれば持病を持つ経営者でも加入できたこともあり、プラチナフェニックスは発売から1年半で7.3万件を販売するヒット商品となった。

保険乗合代理店協会の会議で、節税保険が緊急テーマとして取り上げられた(記者撮影)

その後、東京海上日動あんしん生命やアクサ生命、朝日生命などが同様の災害保障重視型の定期保険を発売。2018年3月に販売した第一生命グループのネオファースト生命の「ネオdeきぎょう」は、傷害死亡しか保障しない第1保険期間を最短5年に設定。その分、前払い保険料を多くして5年後の解約返戻率をピークに持ってくる設計にした。

さらに、この商品は保険料に占める「付加保険料」の比率を高めて、保険料を高く設定した。保険料は、死亡保険金を支払う財源などになる「純保険料」と、保険会社の経費などからなる「付加保険料」の合計で決まる。通常、同じ保障内容であれば、保険料が安いほうがよいはずだが、経営者向け保険では保険料が高ければ損金扱いの金額がそれだけ増える。利益を出している中小企業ほど節税効果が大きくメリットを感じやすい。

金融庁も保険料設定を問題視

ほかの生保会社の商品でも付加保険料を高くする動きが見られる。通常の法人向け保険では、保険料に占める付加保険料の割合は2~3割が適正だが、これを6~7割に設定している会社もあった。この結果、ほぼ同じ保障内容なのに保険料が3倍も違うこともあった。

金融庁も付加保険料の設定について問題視している。昨年6月以降に生保各社にアンケート(法人向け定期保険の付加保険料実態調査)を実施。問題点を指摘された会社は、おおむね今年4月から保険料を下げるなど商品内容の改定を予定していた。

「ネオdeきぎょう」の2018年3月の新契約年換算保険料は100億円を超えた。第一生命の営業職員経由の販売も加わった2018年4~12月のネオファースト生命の新契約年換算保険料は前年同期比で40倍の888億円に膨らんだ。「国税庁にとっては、予定していた税収が取れない想定外の事態だったのではないか」との臆測も業界内では流れる。

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