「教えない」先生がこれから増えていく理由 EdTechが「教室」と「先生」の役割を変える

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このように、同じ学習内容に取り組むにしても、自宅と教室ではまったく違う意味があるものです。どちらか一方で十分ということはなく、補い合う関係です。学習アプリがいくらすばらしいからといっても、それだけで学習を完結させてしまっては、効果が中途半端なものになりかねません。

周りとの関係が希薄になりがちな時代だからこそ、コミュニケーションの場所と機会を与えることで、テクノロジーによる学習効果をより高めることができる。「教室」はその役割を果たすものです。

生徒のモチベーション維持向上が先生の役割

「教室」と同じように、EdTechが普及しても「先生」が必要なくなるわけではありません。アプリが勉強を教えてくれるなら、「勉強を教えてくれる先生」は必要なくなるはずです。これからの先生は、勉強を教える代わりに別の役割を担っていくのです。

先に述べた学習塾の例でも、国内外の約60教室で同じアプリを使用していましたが、担当講師によって生徒の成績向上にばらつきが見られました。なかでも大きな成績の向上が見られた担当講師3人の教え方を見てみると、実に三者三様でした。

授業の後も生徒や親とまめにコミュニケーションを取る先生、授業をその場でお祭りのように盛り上げる先生、データを重視して生徒を細かく分析する先生、それぞれ自分の強みを活かした授業をしていました。

3人の先生にかろうじて見いだせた共通点は、熱意です。やり方は違っても、3人の先生には「とにかくこの子を伸ばしたい」という強烈な熱意が見て取れました。

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「勉強を教えること」が先生の役割だった時代には、学習内容をいかにわかりやすく伝え、生徒の理解を深められるかが、先生の腕の見せどころだったでしょう。しかし、アプリが「教える」役割を代替する時代には、先生に「指導力」は必要なくなるでしょう。

先生の役割は、「勉強を教えること」よりも「生徒のモチベーションを維持向上すること」へシフトさせることであり、そこに熱意を持って取り組める先生が成果を上げたのでしょう。

子どもの個性は十人十色であり、才能を伸ばす方法もさまざまです。先生は、自らの得意技を使ったり創造力を働かせたりしながら、生徒一人ひとりのモチベーションの上げ方を模索していかなければなりません。

「先生」という職業は、テクノロジーの登場によって、より自由度が高く、クリエーティビティーを必要とするものになりつつあります。「教える」必要がなくなった分、「先生をする」ことはより難しくなったともいえるでしょう。

山内 千佳 Digika 代表取締役会長

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やまうち ちか / Chika Yamauchi

神奈川県生まれ。東京女子大学文理学部数理学科卒業後、1989年日本興業銀行入行。1993年からCitibank東京支店にてデリバティブ商品のトレーディングと商品開発業務に従事する。2009年株式会社Digika設立。2011年に珠算教室「かるトレ」開校、2014年ママスタッフとともに「そろタッチ」考案。2016年国内特許取得。2017年日本eラーニング大賞最優秀賞受賞。2019年3月現在、国内外に約60教室、生徒数約1500名。 

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