「教えない」先生がこれから増えていく理由 EdTechが「教室」と「先生」の役割を変える
子どもの教育において、「教室」が果たす役割は重大です。教室で学ぶメリットは、大きく2つあります。
1つは、正しい学習方法の指導です。アプリでは、チュートリアルを付けて使い方を説明することはできますが、本当に正しく利用されているかどうか監視することはできません。
筆者の学習塾で実際に起こった出来事をご紹介します。アプリを開発して生徒に配布し、自宅学習に使ってもらうようになったときのことです。保護者から「教室での学習内容を変更してほしい」という要望が上がり始めました。
「家でできることを教室でやらないでほしい」というのです。そこで、自宅での学習は各家庭に任せ、教室では異なるプログラムを実施するようになりました。
成績の上がらない生徒が出始めた
しかし、思うように成績の上がらない生徒が出始めたのです。ある日、自宅で普段取り組んでもらっているプログラムを教室で実施してみると、データからは見えなかった事実がわかりました。
アプリの学習履歴データとして記録されている正解率を見れば、それぞれの生徒の理解度が把握できます。しかし実際は、学習履歴データの正解率と教室での成績は必ずしも一致していなかったのです。
学習塾に通っていたのは5~8歳くらいの子どもたちでしたが、その時期の子どもの学習について、親はまだ「自分がサポートしなければ」という意識を強く持っています。
そのため、熱心な親ほどよかれと思って、子どもの隣にぴったりくっついて解法や答えを教えてしまうことがありました。また、正解率を上げたいがために、親に隠れて電卓で解く子もいました。つまり、子どもが自力で解いているとは限らなかったのです。
「自分で解かなければ意味がない」とわかる年齢になるまでは、学習のプロセスを見守ってあげる必要があるのです。自宅学習と同じ問題を教室でも解いてみることで、自力で解けるかどうかを確認することができました。
2つ目は、集団学習による効果が見込めることです。
自宅ではほとんど学習したがらなかったのに、教室ではやる気になるという子どもは少なくありません。ほかの子と比較して「自分はできる」という自信がつき、能動的に取り組むようになったり、競争心に火が付いて「負けてはいられない」とばかりに一念発起して頑張るようになったりする子もいます。
教室でほかの子と一緒に何かに取り組むとき、そこには「応援する」「応援される」「励ます」「励まされる」といったコミュニケーションが生まれます。それらの対人コミュニケーションによる学習効果の向上が期待できます。
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