わが子のADHD行動で追いつめられる親の実情 自分のことは後回しになる親たちへ

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「子どもが苦しんでいるのに自分が受診しているようでは駄目だ」ではなく、愛する子どもを愛し続けてあげられるご自身でいるために一度医療を頼ってみてください。精神科に抵抗があればいつも診てもらっている医師にご相談するのもよいと思います。医療の現場では、治療を受けられるだけでなく、お子様がより安定して成長していくための支援や、ご両親がより安心して子育てをしていけるような支援についての情報が得られる可能性もあります。

自身が危うい状態になる前にそばにある支援につながる

Aさんの場合は、まずお薬による治療を優先しました。その後、十分に休養も取れ、落ち着いて状況を理解できる状態まで改善したことを確認し、ADHDについて学んでいただく治療を導入しています。Aさんには、お子様に望ましくない行動が見られたときの接し方などを学ぶペアレントトレーニングが効果的であったように思います。

本来はご両親など支援者に望ましい対応方法を身につけていただくことで、子どもの行動をよりよい方向に導いていくことを目的として行われますが、支援者のストレス軽減にも有効である可能性も報告されています。

ADHDへの理解が進みご両親に余裕がうまれてくると、お子様に対する対応の柔軟さにも繋がってきます。そのため、問題行動ばかりに目を向けるのではなくお子様のよいところ探しをして頂いたり、お子様のためではなく両親ご本人のためにご自身の時間を取って頂いたり、といった働きかけも行います。

また、状況の把握や必要な支援をお願いするため学校と協力関係を築くことが重要になりますが、主治医の先生に相談し医療を通じてコミュニケーション取ることでスムーズに進むこともあるかもしれません。

このように、医療の現場ではお薬での治療だけでなく、難しい状況を乗り越えるための糸口が見つかるかもしれません。重要なことは、ご自身が大切に想っているものを大切にできなくなる前に、そばにある支援へつながることだと思います。ご自身が危うい状態になってしまっても「私がちゃんとしないといけないんです」、「あの子に申し訳ない」としきりにお子様のことを心配されていたAさんのお姿が忘れられません。

大石賢吾(おおいし・けんご)/1982年生まれ。長崎県出身。医師・医学博士。カリフォルニア大学分子生物学卒業・千葉大学医学部卒業を経て、現在千葉大学精神神経科特任助教・同大学病院産業医。学会の委員会等で活躍する一方、地域のクリニックでも診療に従事。患者が抱える問題によって家族も困っているケースを多く経験。とくに注目度の高い「認知症」「発達障害」を中心に、相談に答える形でコラムを執筆中。趣味はラグビー
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