日本人の「教育改革論」がいつも的外れなワケ 課題は「子ども」ではなく「社員教育」にある
先ほども述べたように、私は日本の教育制度が日本経済の衰退の主因なのか、甚だ疑問に感じています。というのは、私の分析では、日本経済の最大の問題点は、規模の経済が効かない極めて小さい企業で働く労働人口の割合が高すぎることで、教育云々は少なくても主要因ではない可能性が高いからです。
日本の教育論は「対象」を間違えている
一方、『日本人の勝算』を書いているときに、日本の教育の問題についてある発見をしました。
確かに、今の日本の教育には問題があるのかもしれません。しかし、そもそも日本で論じられている教育論は、対象を間違えて進められているということが私の発見です。
前回の「企業に『社員教育を強制』するイギリスの思惑」でも説明したように、人口減少に対応するためには、日本は「高生産性・高所得」経済モデルに移行しなければなりません。そのためには、各企業に最先端技術を普及させることが重要です。新しい技術を導入するとなれば、それを使いこなすために、新たな社員の教育が必要になるのは当然のことです。
前回も紹介したように、社員教育と生産性との間には、極めて強い相関関係が認められます。
日本の場合、社員教育に関しての十分な研究データがないのですが、大変に残念な状況にあることが、専門家から指摘されています。
例えば、日本生産性本部は「日本の人材投資は、1990年代前半は約2.5兆円あったものが、年々減り続けており、2010年以降は約0.5兆円とピークの2割程度に低迷している。欧米諸国と比較しても、GDPに占める人材投資は著しく低い」という、学習院大学の宮川教授の分析を紹介しています。
高知工科大学の論文には、25歳以上の通学率は日本ではわずか2%で、OECDの平均である21.1%を大きく下回っていることが記載されています。
いずれの数字も、日本での「社会人教育」が諸外国に比べて、極めて遅れている事実を如実に物語っています。
このような状況が今後も続くようであれば、高生産性・高所得経済モデルへの移行はまず無理です。逆にいうと、このような状況が続いていることが、日本の生産性が低いまま一向に改善されず、新しい技術も普及しない1つの要因となっていると言えるでしょう。
先ほども指摘したように、社会人教育が進んでいないことは、日本の将来を考えると看過できない大問題です。
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