日本人の「教育改革論」がいつも的外れなワケ 課題は「子ども」ではなく「社員教育」にある

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日本の教育のうち、幼児教育は世界的にも高く評価されています。一方、高校、大学と高等教育になればなるほど評価が下がっているのが現実です。World Economic Forumの評価では、基礎教育は世界第7位ですが、高等教育以上のランキングは第23位まで下がります。

社会人教育になるとさらに評価は低く、マネジメント・スクールのランキングとなると、第59位まで大きく下がります。

教育のレベルと生産性の相関を測ると、先進国になればなるほど、とくに大学以上の評価と生産性の水準の相関が強くなります。当たり前といえば当たり前の話なのですが、日本ではほとんど意識されていないのも事実です。

日本の教育は、言われたことを忠実に守る、いわば兵隊を作ることに関しては、すばらしい成績を出していますが、リーダー教育は非常に遅れています。

金融問題・文化財行政・観光戦略・生産性問題の関係で仕事をして感じるのですが、日本人のトップは知識を極めることは得意です。現状分析も徹底的にします。しかし、要因分析、予想、問題の本質を追求することは苦手です。というより、今までそういった分析を見たことがほとんどありません。報告書はどの国の誰よりも詳しい。しかし、示唆に欠けるのです。

この状況を打破するために、最も必要なのは大学レベル以上の教育機関と教育内容の改革でしょう。リーダー教育は大学教育の基本ですし、知識を積む高校までの教育を発展させて、示唆を探る教育こそ、大学教育の使命のはずだからです。

とくに、大学は青年だけのものではなく、成人した人が何度も通学する時期があるように改革する必要があります。先日、オックスフォード大学に通っている学生のうち、すでに1回大学を卒業している再就学者の比率が50%を超えたと聞き、びっくりしました。

何度も繰り返し述べているように、日本は人口減少と高齢化が世界一進む国です。この大変な状況を乗り越えるには、日本は世界一の「社員教育大国」にならなくてはいけないのです。

しかし、日本の教育の現状を見ると、まるで1950年代で時間が止まったように見えます。このことも『日本人の勝算』を書いている間に気づいた事実です。

すべては「人口減少への対応」に帰結する

さて、今回で本連載は第11回目を迎えました。この連載では人口が激減する今後の日本が取り組むべきさまざまな問題をテーマに取り上げてきました。

小さい企業に勤める人が多い問題、技術の普及が進まない問題、輸出が少なすぎる問題、そして今回は教育の対象が間違っている問題を取り上げました。

これら一つひとつのテーマを見ると、それぞれが独立しているように見えるかもしれませんが、実はすべてつながっています。

日本経済の仕組みが人口増加を前提として出来上がっており、人口減少の時代には相応しくなくなっているので、大改革が必要不可欠だ。

どのテーマを掘り下げても、結局はこの結論に達するのです。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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