第1の方法は、本人の財産管理を家族等が代理する財産管理等委任契約と共に、本人が認知症と診断された場合には家族の誰かが任意後見人となるという任意後見契約を書類化して、公証人役場に行って契約として有効にしておくことだ。
制度の趣旨として望ましいことなのかどうかはともかくとして、任意後見には移行せずに、委任契約による代理人が銀行などの取引を含む本人の財産管理を続けるケースが多いようだ(9割以上と聞く)。任意後見契約は、将来、法定後見人の選任を避けるためのワクチンのようなものだと理解されたい。本人が意思能力があるうちに、任意で結んだ契約が優先されるのだ。
善意の家族・親族にしてみると、任意後見をスタートさせて、監督人に報酬を支払わなければならないことに納得感がないだろう。不動産売却等でどうしても後見人が必要な場合以外は、代理契約のままで財産管理することが便利だろう。もちろん、代理人が本人の資産を流用したり(家族にも、専門職にも、「悪い奴」はいる)、財産管理が不適切だったりする場合があり得るし、将来の相続を巡って関係者の利害が対立することがあり得る。特に、相続については、本人の意思がしっかりしているうちに、関係者で合意を形成しておくことが重要だ。
「家族信託」と呼ばれる信託契約を活用する
もう1つの方法は、通称「家族信託」と呼ばれる信託契約を結んで置くことだ。例えば、不動産を信託の対象にする財産として、親本人が委託者、長男が信託の受託者となって、財産の管理・処分を任されて、その受益者として、最初は親本人、次は親の配偶者、さらには親の子供(例えば長女)などを指定しておく方法だ。信託銀行を使わずに、私的な信託契約が可能なので、これを利用する。財産の管理方法を細かく決めておかねばならない分、財産管理に関する代理契約や後見制度よりも柔軟性を欠く面があるかも知れないが、不動産等管理すべき財産が明確で、本人が将来こうしたいという内容がはっきり決まっている場合には良い方法である。
契約書を自分で作ることも出来るはずだが、司法書士などに相談して、信託契約を作ってもらうことになると、数十万円程度の費用が掛かるようだ。それでも、法廷後見人や監督人にずっと報酬を払い続けなければならない状況よりもましだ、と考えられる場合が少なくあるまい。
筆者は、これまで金融資産の運用に関心を持っていたが、本人が認知症等になるリスクのある最晩年期の資産管理の適切な方法が分からず、悩んでいた。ここのところあれこれと情報収集に努めている。
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