キャッシュレス普及でくる信用格差社会の恐怖 クレジットスコアが重視される社会に

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──人のランクづけという意味では、中国の例が強烈でした。

中国では「アリペイ」のクレジットスコアに個人の生活情報も取り込んで点数化する「芝麻(ジーマ)信用」が、個人をランクづけする半ば公的な基準になりつつあります。返済履歴や資産状況はもちろん、公共料金の支払いから学歴・職歴、罰金や犯罪履歴、果ては交友関係、日常の行動・趣味嗜好・関心事、SNSでどんなことを話しているかまで吸い上げられる。

芝麻信用で高スコアだと、病院の預かり金が不要、空港では専用通路で並ばずに手続き、部屋の敷金無料、就活や婚活サイトでも有利など、あらゆるサービスで優遇されます。生活をよくしたければ個人情報をどんどん芝麻信用に提供して点数を上げ、社会的ステータスを高める。そしてできるだけ点数の高い友人知人を増やしてさらに点数を稼ぐ。

国にとって好ましくない人間は…

中国政府は2020年までに国家版芝麻信用ともいえる「社会信用システム」を普及させる方針です。国にとって好ましくない人間は普通の生活すら立ち行かなくなる、と公然と述べている。ブラックリストに載れば飛行機や高速鉄道の切符が買えなくなるという、究極の監視社会、窒息社会ですよね。

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──まさにディストピア……。

アメリカはまだ金融、経済に限ってるけど、中国は日常の行儀のよさ、思考、信条、交友関係にまで格付けが入ってきてる。そんな未来像があることも、日本は一度立ち止まって考えたほうがいい。

ところがびっくりしたことに、若い人と話すとみんな何の疑問もなく、格付けを受け入れようとしている。「怖くないの?」って聞くと、「いや、自分がどれくらいの位置にいるか知りたい」って。自分の経歴に箔をつけたいって感じですかね。とくに自分は上位にいるはずと思っている男性ね。そういう人がどんどん出現しているのは世代的なものなのか。僕ら怖くて嫌だけどね。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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