混乱を極めるベネズエラと2人の大統領の行方

これまでの経緯と予想されるシナリオを解説

反マドゥロを掲げて、”解放作戦”を開始したグアイド氏(写真:REUTERS/Carlos Jasso)

年初以来、ベネズエラでは2人の大統領が併存する異様な状況が続いている。片方は2018年5月の大統領選で再選を果たしたニコラス・マドゥロ大統領、もう片方はアメリカや日本を含む50カ国以上の国がベネズエラを代表する大統領として認めるフアン・グアイド暫定大統領だ。

ベネズエラ憲法第233条では大統領が不在の際には国会議長が暫定大統領に就任すると定めている。野党主導の議会は、野党有力候補が実質排除された2018年5月大統領選は正当性に欠けると主張し、同条項を根拠にマドゥロ大統領が2期目をスタートして間もない2019年1月23日、国会議長であったグアイド氏が暫定大統領への就任を宣言した。アメリカ政府は同日、グアイド暫定大統領を強く支持することを表明。欧米諸国や周辺国などが追随して、マドゥロ政権に対する国際社会からの圧力は高まっている。

過去数年間、マドゥロ大統領の失脚が予想されてきたが、とうとうその時が迫っているようだ。アメリカの有識者の間ではマドゥロ退陣は時間の問題であり、今や政権交代は免れないとの見方が支配的だ。

2019年3月16日、グアイド暫定大統領はベネズエラ北部バレンシア市を皮切りにベネズエラ各地をめぐるキャンペーン「Operación Libertad(解放作戦)」を開始した。マドゥロ政権に対する反対運動を全国的に展開する。時期は明らかとなっていないが、最終目的地であるマドゥロ大統領が支配を続けるミラフローレス大統領宮殿に到達する頃には、両者の緊張が最高潮に達する見通しだ。政権交代を見据え、数週間前よりアメリカの政府と産業界はベネズエラ再建と市場への再参入に向けて本格的に準備に動き出した。

ハイパーインフレとインフラ崩壊の生活苦

サウジアラビアをも上回り、世界で最も多くの原油埋蔵量を誇るベネズエラ――。過去には比較的安定した民主国家であり、南米で最も裕福で、域内諸国の模範と捉えられていた時期もあった。

しかし、今日、同国は人道危機そして債務危機やハイパーインフレをはじめとした経済危機に陥っている。IMF(国際通貨基金)は、2019年末のインフレ率は1千万パーセントまで上昇すると予想している。食料品から医薬品、トイレットペーパーまであらゆる生活必需品が不足し、過去5年間で同国のGDP(国内総生産)は半減。医療制度が崩壊する中、病気が蔓延し、治安悪化、電力や水不足など生活苦に大半の国民は直面している。

マドゥロ政権下、主に2015年以降、ブラジル、コロンビア、チリ、ペルーなど周辺国にはベネズエラ難民が押し寄せ、国連によると同年以降のベネズエラ難民は300万人を超える。これはシリアやアフガニスタンなど戦争で荒廃した国の難民の数に匹敵する。

ベネズエラ経済を支える原油だが、国際エネルギー機関(IEA)によると2019年2月の同国の産油量は日量約114万バレルまで低下した。マドゥロ政権発足時の2013年と比べ約半減、ウーゴ・チャベス前政権発足時の1999年まで遡ると3分の1以下まで下落している。

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