混乱を極めるベネズエラと2人の大統領の行方 これまでの経緯と予想されるシナリオを解説
2014年、2017年にも国内で大規模デモが行われたがマドゥロ政権は弾圧によってこれを押さえ込み、政権交代を免れた。だが、次の3点から、現在はこれまでと状況が異なってきている。
従来は野党が分裂していたことがマドゥロ政権を倒すことを妨げてきた。だが、今回、野党はグアイド暫定大統領への支持で団結している。とはいえ、仮にマドゥロ大統領が長期にわたり退陣しない場合、野党内には、グアイド暫定大統領に任せることに痺れを切らし再び分裂に向かうリスクが潜んでいる。
2018年5月の総選挙結果を無効とし、グアイド暫定政権を多数の国が認め、海外からの圧力が高まっている。
トランプ政権は政権発足当初、中南米への関心が薄く、2016年大統領選を制すると予想していなかったためか、中南米戦略はなかった。政権発足当初に米州地域の会合に出席したアメリカの政府職員によると、アメリカではなく、メキシコが主導権を握っていたという。だが、昨今は状況が変わってきた。トランプ政権に明確な外交政策がない中、トランプ大統領が注目しているロシア、北朝鮮、中国などの国以外の政策については、大統領は周りのアドバイザーや議会議員などの影響を受けやすいことが指摘されている。
したがって、マドゥロ政権に対する強硬姿勢は特にマルコ・ルビオ上院議員(共和党)やジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官などの影響を受けている可能性がある。2018年11月、ボルトン補佐官は、ベネズエラ、キューバ、ニカラグアなど反米左派を西半球の「暴政のトロイカ」と称し、ジョージ・W・ブッシュ政権時代の「悪の枢軸」を連想させる対抗姿勢を示した。
アメリカによるベネズエラの石油産業に対する制裁は、その後、中国やインド向け輸出の拡大によって影響が緩和されている。だが、インド政府は民間企業にベネズエラ産原油の輸入を控えるよう伝えているという。さらには今後、アメリカの制裁は強化されることが予想され、マドゥロ政権はますます苦境に陥ること必至だ。
前述の通り、深刻な経済危機の影響は広く国民に及んでいる。これまでマドゥロ政権を強固に支えてきたチャビスタ(チャベス派)からも同政権は支持を失いつつある。カラカスのチャビスタが多く居住する地区でも反政府運動が展開されるようになっている。経済危機でバラマキ政策が従来どおりできない状況下、アメリカなど各国による経済制裁強化がますます、危機を悪化させ、今後、マドゥロ大統領に反旗を翻すチャビスタが続出すること必至だ。
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