悩みがないなら、不幸な人に思いを馳せよ! 今回の相談は挑戦的!

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世の中には正当な理由で悩む人が大勢いる

世の中には、悩む正当な理由があって悩んでいる人がいっぱいいるのです。彼らは「今、悩んでも仕方ない」わけではない。だから、あなたが今何の悩みもないのなら、自分がこんなに幸福なのに、不幸な人がいっぱいいることに対して、自分は五体満足なのに、身体に障害を持った人がいることに対して、自分は犯罪人ではないのに、明日の処刑を恐れおののいている死刑囚がいることに対して、その人に身内が殺された人がいることに対して、わずかにでも思いを馳せたらいかがでしょうか?

私は、これまでこういう操作をやりすぎてきました。そして、自分が何らかの点で報われている場合、そういう自分を許してはならないと決めてきました。私は20代の頃、あまりにも自分が不幸だったので、そして、その後、苦境を何とか脱却したとき(一生哲学をしていいという地位が与えられたとき)、世の中には不幸な人がいっぱいいるので、自分は幸福になってはならない、と決心しました。そして、絶え間なく自分は悩まなければならない、と決心したのです。すると、ちょっとだけ死にたくなるほどの罪責感から逃れることができました。

というわけで、普通の人生相談なら最初に書くべきことを今回はわざと最後に回しました。というのも、こういうことをノウノウと語るのは、やっぱり気恥ずかしいからです。

今回の参考文献としては、『不幸論』(PHP新書)と『生きにくい――私は哲学病』(角川文庫)を挙げることにします。

中島 義道 哲学者

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なかじま よしみち / Yoshimichi Nakajima

電気通信大学元教授・哲学塾カント主宰
1946年福岡県生まれ。77年東京大学大学院人文科学研究科哲学専攻修士課程修了。83年ウィーン大学基礎総合学部哲学科修了、哲学博士。専門は時間論、自我論。2009年電気通信大学電気通信学部人間コミュニケーション学科教授を退官。現在は「哲学塾 カント」を主宰し、延べ650人が参加した。著書は『働くことがイヤな人のための本』『私の嫌いな10の人びと』『人生に生きる価値はない』(以上、新潮文庫)など約60冊を数える。

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