波乱の「英国EU離脱」は急転直下の3月合意も

親EU派とEU懐疑派の攻防、諦めないメイ首相

強硬離脱派やDUPの合意受け入れの障害となっているのが、EU離脱後の南北アイルランド間の国境管理に関する取り決めだ。英国の一部である北アイルランドと、EU加盟国であるアイルランドの間には、約500キロの陸続きの国境線がある。英国がEUを離脱した後は何らかの国境管理をしなければ、税関や規制の抜け道となってしまう。

だが、この地域ではかつて、プロテスタント系住民(英国の一体性維持を主張するユニオニスト)とカトリック系住民(アイルランド再統一を主張するナショナリスト)の間で激しい衝突が繰り広げられ、3000人以上が犠牲となった。和平合意の趣旨や住民感情に照らして、何らかの物理的な国境施設を設けることはできない。

そこで英国は関税の代行徴収と技術活用で物理施設なしに国境を管理する方法を提案しているが、EU側はこれを技術的に未熟として拒否している。最終的な解決策は離脱後の移行期間中に英EU間で交わす将来関係の中でみつけることとし、この段階では移行期間中に解決策がみつからない場合の安全策として、英国全体がEUの関税同盟に事実上残留することで合意した。

この安全策は一時的な措置とされるが、最終的な解決策がみつかるまでは継続し、英国側の事情で終了することはできない。EUが英国の提案を拒否し続け、いつまでも安全策から抜け出せないおそれがある。

EUの属国になる、と抵抗を続ける強硬離脱派

関税同盟に残留している間は、他国と自由に貿易協定を結ぶことができず、EUが第3国と新たに結んだ自由貿易協定の適用を拒否することができない。安全策が発動した時点で英国は既にEUを離脱していることから、EUの政策決定に参加することもできず、関税に関するルールを受け入れる必要がある。強硬離脱派を中心に、ひとたび安全策が始動すれば半永久的にEUの属国になるとの不安がある。

こうした不安に配慮し、英国とEUは12日の2度目の投票直前に安全策の見直しで合意した。これまでも安全策が時限的な措置である趣旨の声明を繰り返し発表してきたが、今回は一歩踏み込んで、その時限性を保証する共同の法律文書と共同声明を交わし、必要に応じて安全策から抜け出すこともいとわないとする単独声明を発表した。

その結果を踏まえて臨んだ12日の投票では、初回投票に反対票を投じた与党とDUPの128名のうち、39名が政府の合意案の支持に回ったが、85名が再び反対票を投じた。EU側はこれ以上の譲歩に応じることを明確に否定している。このまま議会にメイ首相の合意案の受け入れを迫っても、149票差を覆すことは不可能で、メイ首相の合意案は死んだとの声も聞かれる。

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