波乱の「英国EU離脱」は急転直下の3月合意も 親EU派とEU懐疑派の攻防、諦めないメイ首相
混乱する英国議会――。英国の欧州連合(EU)からの離脱期限(3月29日)が10日余りに迫っている。だが、12日、議会はテリーザ・メイ首相がEUと合意した離脱案の受け入れを賛成242・反対391、149票の大差で否決した。懸案となっている北アイルランド国境管理の安全策を見直し、1月の初回投票時の230票差から縮まったものの、野党勢の大多数に加えて、メイ首相が率いる与党・保守党の75議員、閣外協力する北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)の全10議員が反対票を投じた。
政府案が再び否決されたことを受け、13日には「合意なき離脱」を回避するか否かを問う採決が、14日にはEUとの協議期限延長の是非を問う採決が立て続けに行われた。
前者は可決され、合意なき離脱の回避が選択された。だが、親EU派の閣僚4名を含む31名の与党議員が投票を棄権、17名が党議拘束に反する賛成票を投じた。おまけに、投票に先駆けて行われた修正動議では、EU懐疑派の閣僚と与党議員の総勢149名が、政府の離脱方針とは異なる離脱案に賛成票を投じた。
後者も可決され協議期限の延長を要請することとなった。だが、閣僚辞任を恐れて議員の自由投票を認めた結果、保守党議員の188名が反対票を投じた。投票直前の演説で政府案への支持を呼び掛けた保守党議員が自身は反対票を投じ、党議拘束をかける役割を担う保守党の院内幹事長が投票を棄権した。
保守党内分裂でも戦い続けるメイ首相
このように、離脱方針をめぐって保守党内の統率が失われつつある。今
後の協議をにらんで政権内の協力者を失いたくないメイ首相は、党議拘束に違反した閣僚を叱責こそしたが、更迭できずにいる。協議期限間近の迷走に、さすがに党内からも、このままメイ首相に離脱協議を任せることはできないとし、首相の早期退陣を求める声が浮上している。別の議会関係者からは、離脱協議のこう着を打開するには、議会の解散・総選挙や2度目の国民投票を行い、国民に判断を仰ぐ以外に道がないとの声も聞かれ始めた。
だが、鉄の意志を持つメイ首相はまだ諦めていない。今のところ政権を途中で投げ出すつもりも、離脱方針を曲げるつもりもないようだ。14日の投票では、単に協議期限延長の是非を議会に尋ねるのではなく、①20日までに議会が政府の離脱案を受け入れれば、その後の法制化作業や批准に必要な時間を確保するために、6月30日までの離脱期限延長をEU側に要請する、②逆に20日までに議会が政府の離脱案を受け入れなければ、暗に長期間の期限延長が必要となる可能性がある、と示唆して議会に合意受け入れを迫っている。
14日の投票後もすぐに協議期限延長に舵を切るのではなく、20日までに3度目の合意受け入れ是非を問う議会採決を行うことを目指しているわけだ。3度目の採決が失敗に終わった場合も、29日の協議期限までに4度目の採決を目指すのではとの声も聞かれる。
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