ブレグジットに反対する「エニウェア族」の正体 「リベラルな知識人」が自由民主主義を壊す

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大量移民受け入れ後の欧州で今、何が起きているのか。そして日本もひとごとではない(写真:robertiez/iStock)
英国でベストセラーになり、20カ国以上で翻訳され世界的な話題を呼んでいる『西洋の自死 移民・アイデンティティ・イスラム』。日本の読者の関心も大いに引きつけている同書は、英国をはじめとする欧州各国で移民を受け入れすぎたため、各国の民族構成や文化、宗教が、近い将来、大きく変わってしまうという危機感を、英国の気鋭のジャーナリスト、ダグラス・マレーが詳細に描き出している。
移民問題は日本にとっても対岸の火事ではない。昨年12月に改正入管法を可決し、外国人単純労働者の大規模受け入れを決めた日本も、近い将来、移民問題で悩むことになる可能性が十分にある。
大量移民受け入れ後の欧州で今、何が起きているのか。ブレグジットをめぐって大激論となっている英国をはじめ、欧州各国で起きている世論分断の背景を探っていく。

浅はかな知識人

『西洋の自死』は、移民の大量流入のため社会が壊れつつある西洋の苦境を丹念に描き出しているだけではない。苦境を招いた西洋社会の思想的欠陥にも踏み込んでいる。

『西洋の自死』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

とくに興味深いのは、著者のマレーが、現在の知識人は自由民主主義をよく理解していないのではないかと疑問を呈する点だ。

例えば、同書16章「『世俗後の時代』の実存的ニヒリズム」では、ドイツの国法学者エルンスト=ヴォルフガング・ベッケンフェルデが1960年代に提示した次の問いを扱う。「自由で世俗化された国家は、それ自体が保証することのできない規範的な前提を基盤に存立するのか」という問いである。

つまり、近代的で合理的だと思われている自由民主主義の政治秩序だが、実は、それが成り立つためには、近代的・合理的とは言いがたいもの、具体的には伝統的な文化や宗教、道徳が社会の土台にしっかりなければならないのではないかというのだ。また、伝統的な文化や宗教、道徳を共有する人々の間でのみ感じられる連帯意識(仲間意識)や相互の信頼感も不可欠ではないかというのである。

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