EU離脱で英国メイ首相の挑む「最後の戦い」 EUと合意も、議会承認までは市場も不安定に

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メイ首相には閣内、議会との厳しい戦いがこれからも続く(写真:Parbul TV/Handout via Reuters TV)

11月14日、テリーザ・メイ英首相は、5時間以上に及んだ閣議の末、「内閣は政府が離脱協定案と政治宣言の概要に同意すべきという共同決定を下した」と述べ、ついにEU(欧州連合)との離脱協定に合意する方針を発表した。しかし、同時に「この先も厳しい日々が続くと承知している」とも語り、決して楽観の雰囲気はない。

このタイミングで対EU交渉を手打ちにするというのは一種の「賭け」であると同時に、文字通り「最後の戦い」への一歩でもある。今回の「外(=EU)」との合意内容を持って、メイ首相はこれから「内(≒閣内および議会)」との交渉に臨まなければならない。

もともと「内」の混乱があったからこそ「外」との交渉がこれだけ遅延した経緯を思えば、これから迎えるハードルのほうが高いといえる。こうした状況はメイ首相の「われわれの前にある選択は明白だ。この合意か、あるいは合意なしで離脱するか、離脱しないかだ」という言葉に凝縮されている。もはや「内」をまとめる材料はテーブルに出揃い、あとはメイ首相の調整能力に依存する状況である。

身内にも不満渦巻き、議会承認のハードル高く

今回、閣内では一応の合意を見たわけだが、メイ首相はこの決定を「集団的決定(a “collective” decision)だった」と述べ、暗に全会一致ではなかったことを示唆した。これまで同様、身内の抗議の辞任に見舞われる公算は大きい。今回の発表を受けてユーロおよびポンドは共に上昇しているものの、振り切れた動きではなく、やはり戸惑いを感じつつの上昇と見受けられる。

多くの市場参加者は「英国議会の承認(2019年1月21日期限)がなければ何の合意にもならない」という事実を認識しているのだろう。なお、離脱協定交渉が紛糾したことで現段階ではあまり議論が及んでいないが、離脱協定があってはじめて、2019年3月離脱から2020年12月までの移行期間が設定されることになり、その移行期間中に通商関係を含む両者の「将来の関係」を交渉しなければならない。これも簡単な話にならないことは容易に想像がつく。

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