イタリア政局混乱でECBが直面した大誤算 まさかの再選挙、ユーロ相場はもっと下がる
イタリア政局が混迷の度を深めてきた。今年3月の解散総選挙を受けて極左政党である「五つ星運動(M5S)」と極右政党である「同盟(The League)」の連立協議という無理筋な展開に追い込まれていたが、結局、政権樹立に至らず再選挙という可能性が濃厚になってきた。後述するように、ECB(欧州中央銀行)にとっては最も忌むべき、大誤算の展開ということになりそうである。
最初に事態を改めて整理しておくと、3月総選挙で獲得議席数でトップとなった「五つ星運動」のルイジ・ディマイオ党首、そしてこれと連立を組む「同盟」のマッテオ・サルヴィーニ書記長は協議の上、共に首相には就任しないことで足並みを揃えていた。そして5月21日、両党は政界でほぼ無名の弁護士であるジュゼッペ・コンテ氏を首相候補として推薦することで一致し、セルジョ・マッタレッラ大統領も同氏の指名に賛意を示していた(イタリアでは大統領が首相と閣僚の任命権を有する)。
しかし、閣僚名簿のうち、財務相候補として推薦されていたエコノミスト兼企業幹部でかつて産業相も務めたことのあるパオロ・サボナ氏については、マッタレッラ大統領が拒否した。2党がサボナ氏以外の候補を推薦しなかったため、コンテ氏は組閣を断念。足元の混乱に至っている。
まさかの9月再選挙は本当に「国益」になるか
マッタレッラ大統領はサボナ氏の指名拒否の理由に「国益」という言葉を用いており、サボナ氏がかつてユーロ離脱計画の必要性を主張していたという経緯を考慮したことがうかがえる。組閣失敗を受けマッタレラ大統領は元IMF(国際通貨基金)財政局長のカルロ・コッタレッリ氏を暫定政権の首相とし、組閣を委ねている。
コッタレッリ氏はバックグラウンドからも分かるように、親EU(欧州連合)でかつ緊縮路線を明確に支持する人物だ。上述の2党とは正反対の主張を持つ。同氏が議会の信任を確保した上で予算審議などを乗り切るのは事実上不可能であることから、来るべき総選挙までの選挙管理内閣としての位置付けになる。こうした状況下、既に一部の伊紙では9月9日再選挙という観測が報じられている。
しかし、どのような理由であれ、総選挙で選ばれた政治家が推薦する閣僚候補の「主張が気に入らない」いう理由で、大統領が組閣に協力しないということには後味の悪さも残る。仮に反EUの連立政権が成立し、その経済・外交方針が欧州委員会の基本方針と全面衝突することになったとしても、交渉してすり合わせ、着地点を見極めるのが筋だったのではないか。両党は指名拒否が憲法違反になるとして、大統領の弾劾手続きを要求している。
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