「昨年、大学時代に複数の企業のインターンで実務経験を積み、日本語と英語と中国語のトリリンガルの学生がいたが、金融系ベンチャーから700万~800万円、外資系金融機関からも600万~700万円のオファーを受けていた。語学力もあると、引く手あまたとなる」(宮本氏)。海外企業との熾烈な競争を繰り広げている日本企業も人材流出を防ぐために、高額な報酬での人材獲得を率先して行っているという。
実務経験を積んでいなくても、ITエンジニアとして働くための基礎教養を身に付けている学生の引き合いも強い。企業から評価が高いのは、データサイエンティストの基礎が身に付いている学生。具体的には、統計学を学んでいる学生だ。統計学を学ぶ数学科の学生の就職先といえば、保険や年金などの数理計算を行うアクチュアリーが代表例だったが、選択肢はかなり増えている。
「集めたビッグデータを、分析ソフトにかければ、誰でも分析結果は導き出せるが、どういう計算方法によってその結果が出てきたのかわからないと、分析結果を正しく解釈できない。その解釈に必要なのが、統計学の知識」(瀬尾教授)。学生時代に身に付けていると、入社してから学ぶ必要はなく、いち早く活躍できるようになる。
データサイエンティストの需要が急拡大
プログラミング言語でも、統計解析用の言語である「R(アール)」や、ビッグデータ解析や人工知能などで利用される「Python(パイソン)」を学んでいる学生は、高く評価されるという。同大理学部の応用数学科では、以前から「Java」などの言語を学ぶ講義があるが、そこに、「Python」の講義も加わった。「コードをきっちり書くまでいかなくても、言語を理解していれば、プログラマーに指示ができ、重宝される」(瀬尾教授)という。
高額の給料を支払うだけでなく、人材紹介会社に多額の紹介手数料を支払って、新卒学生の獲得を図る企業も少なくない。「数年前までは、新卒のITエンジニアを採用する場合、数年前の紹介手数料は平均で50万~60万円程度が相場だったが、最近は『100万円で人材を集めてほしい』と依頼されるケースも珍しくない」(宮本氏)という。
IoTやビッグデータを扱える技術者を求める勢いは、今後衰えそうにもない。新卒のITエンジニアの争奪戦はまだまだ続きそうだ。
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