ドバイで増殖する「日本のパン屋さん」の正体 高級モールなどで9店舗を展開

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店内のインテリアにもハムダ氏のこだわりが随所に感じられる(写真:サトウ氏提供)

ハムダ氏が、店内にさりげなく桜を飾るなど、日本風の洗練されたインテリアを取り入れたこともドバイの人たちには新鮮だった。食材だけでなく、併設するカフェで使う食器も日本製を利用。日本発であることが、品質やおしゃれ感を保証するブランドイメージとして信頼されているという。

ドバイのパン屋ビジネスは、規模がケタ違いだ。ヤマノテアトリエでは、クッキーなどの焼き菓子もラインナップに加えており、1000人規模の結婚式から数十人規模のホームパーティーまで、手土産用のクッキーの注文を受ける。サンドイッチをデリバリーすることも多い。しかも5年間で8店舗。ハムダ氏は大きな成功を手に入れたと言える。

将来的には日本進出も視野

現在34歳、3人の子どもを持つハムダ氏は「この成功はうれしい。なぜなら、私たちが、人々が愛して信頼する品質を提供できているということだから。そして、日本のパンとパン職人の方の貢献により、私たちは新鮮で品質が高い日本式パン屋を中東で展開することができました。東京は私に大きなインスピレーションをくれました」と喜ぶ。今後の夢は大きく、「5年後をメドに日本にもヤマノテアトリエの店舗を出したい」と意気込む。

ヤマノテアトリエとハムダ氏の躍進を多くの人が喜んでいるが、その1人がヤマノテアトリエの前身ともいえる、ケーキ屋の立ち上げ時にパティシエを紹介するなどしたサトウ幸枝氏である。もともと銀行員や秘書、客室乗務員などをしていたが、いつしか中東でビジネスを展開したいと考えるようになり、前述の日本人男性とハムダ氏の父親を通じてハムダ氏と知り合った。

サトウ氏自身も中東でのスイーツ事業に可能性を感じており、製菓学校にも通い、ケーキの作り方を学んだ。そのうえで、有給休暇を利用してドバイへ飛んでは、可能性を探り始めた。時間をかけて中東について学び、現地へ通ったり、中東からの来日客をもてなすために、着物を着て東京の観光案内をしたり。ドバイのスーパーで日本の果物を紹介する、料理教室を開くといった仕事も舞い込んだ。宣伝を兼ねて現地のテレビ番組に出演したこともある。

ハムダ氏と事業を展開するには至らなかったが、何人ものドバイの人たちと会い、現地へ通って得た手応えから「向こうの人は、組織の名前よりも、相手の個人としての行動や信用を重視する。人の紹介を大切にする。日本人と似て、正直で人を信用する」と話す。先入観にとらわれず、目の前にいる人、体験した町の雰囲気から感じ取れる印象を大切にしたのだ。

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