ドバイで増殖する「日本のパン屋さん」の正体 高級モールなどで9店舗を展開
転機が訪れたのは2011年。日本で東日本大震災が起きたことで、日本からケーキの原料が取り寄せにくくなってしまったのだ。「日本の柔らかいケーキを作るには、日本の粉と、日本の生クリーム、そして日本の卵が欠かせない。
が、震災以降、特に重要な生クリームが取り寄せられなくなってしまい、パン屋に転向することになった」と、当時の事情に詳しい前述の日本人男性は話す。が、ケーキ屋をともにやっていた日本人はいるものの、パンについては全員素人。
そこで、サガミパン工房ブンブンの代表である地主将人氏に指導を仰ぎ、同氏が開発したレシピに基づいてヤマノテアトリエを立ち上げ、ついに2013年4月4日、ヤマノテアトリエの1号店を出店。十分な準備期間と入念な場所選定が奏功し、店の前には行列ができるほどの人気店となった。その後、ドバイにはヨックモックやほかの日本のパン屋が出店していく。
コロッケパンのような総菜パンが好き
「当時、湾岸地域には日本のパン屋は一軒もありませんでした。UAEの人の多くは新しいもの好き。ヤマノテアトリエでは日本のように1日4回パンを焼いて、フレッシュな状態で出しているし、自分で好きなパンをトレーにのせるという日本式の購買方法も取り入れており、こういうスタイルがドバイでウケたのでは」と、ハムダ氏は成功の要因を振り返る。
同氏によると、「例えば日本人学校のそばある店舗は日本人でにぎわっているし、そのほかのアブダビおよびドバイの店舗は金融街のそばにあるのでヨーロッパの人がたくさん来る。が、主要顧客は地元の人です」という。「彼らはコロッケパンのような総菜パンが好き」。
品質へのこだわりも強い。目下、小麦粉は日本製を使っているほか、ほかの多くの素材も日本から仕入れている。また、日本人のパン職人を3人雇っており、日本のパン屋同様、閉店時には売れ残ったパンをすべてさげ、翌日には焼きたてのパンを並べる。「可能な限り日本のパン屋と同じにし、顧客に日本のパン屋の体験をドバイでしてもらいたい」(ハムダ氏)。
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