ソニー、東芝が表明 次世代TV投入のワケ
製品化が難しく夢の次世代品といわれてきた有機ELテレビが、激戦の薄型テレビ市場に姿を現す。(『週刊東洋経済』4月28日号・5月5日号より)
4月中旬、東京・有明で開かれた世界のパネルメーカーが集まる展示会に、黒山の人だかりができるブースがあった。展示会に合わせてソニーが2007年、東芝も09年度中に製品化を表明した有機ELテレビだ。
有機ELのディスプレーは有機化合物に電圧をかけて自発光させる。液晶画面に使うバックライト(光源)が不要なため、超薄型・軽量化ができる次世代型のディスプレーだ。ソニーが展示した有機ELテレビの厚さは3ミリメートル以下で、接触禁止にもかかわらず不思議そうに“極薄”の画面をつまむ人が絶えなかった。
視野角の広さや動画応答速度の速さなど、既存の薄型テレビをしのぐ点は多い。しかし、画面寿命が短く大型化が難しいこと、製造コストの高さなどから夢の次世代テレビとされてきた。
有機ELに懸ける執念
実際、東芝の有機ELパネルを開発・製造する東芝松下ディスプレイテクノロジーによると、薄型テレビ用の有機ELは寿命の面で「実用化の段階ではない」とし、09年度に向けた課題はまだ多い。
さらに東芝はキヤノンと共同で別の次世代ディスプレー「SED」の開発にも力を入れてきた。東芝の西田厚聰社長は4月12日の会見で「07年内にSEDテレビを発売する戦略に変わりはない」と断言。しかし、現状はキヤノン側で抱える製造特許の訴訟問題で停滞ムードも漂う。SEDは発売延期を繰り返しており、有機ELが同じ轍を踏む可能性は否定できない。
一方、量産化にメドをつけ、07年投入を同日に公言したソニーの思い入れは強い。かつて平面ブラウン管で一世を風靡するも、薄型テレビへのシフトが出遅れ、06年3月期のテレビ事業は約900億円の大赤字を出した。07年3月期は収支均衡圏へ急回復する見込みだが、高収益化への道筋はまだ見えない。液晶やプラズマテレビで壮絶な価格競争が繰り広げられる中、次世代テレビでの圧倒的シェア獲得を目指している。
ただ、最初にソニーが発売する有機ELテレビは11インチ型と小粒。今の薄型テレビは32インチ型以上が売れ筋で、「有機ELがこのレベルに来るのは難しい」と競合は余裕の表情を見せる。はたして、有機ELは既存の薄型テレビ市場をどれだけ切り崩せるか。
(書き手:山田雄一郎、中島順一郎 撮影:風間仁一郎)
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