PDCAより「OODA」が日本で導入しやすい理由  「宮本武蔵とキーエンス」は戦わずして勝つ

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ドイツ軍は、敵の意表をつき、予期していなかったところから攻撃をすることで、相手を心理的にパニックに陥らせました。実際、連合軍は戦う前に戦闘を放棄して現場を逃走する兵が後を絶たなかったため、ドイツ軍はほとんど反撃を受けず、最小限の損害で量的に自軍を上回る連合軍を制圧することができたのです。このような機動戦の原型が、すでに武蔵の決闘のなかに、そして『五輪書』の記述のなかに見られるのです。

つまり、武蔵の戦略とは、闘う前に心理的に優位に立つということです。これは孫子の「戦わずして勝つ」の武蔵なりの具体化です。機先を制し、闘う前に、心理的に優位に立ち、「勝つべくして勝つ」ことを可能にしたのです。

OODAの武蔵、PDCAの剣術猛者

このような機動戦には、不確実性の削減が重要です。敵よりも多くの確かな情報を得て、敵よりも情報的に優位になることで、心理的優位性も獲得することができます。この不確実性の削減の主なツールが、OODAになります。

OODAの要諦は、観察と情勢判断です。観察では、敵よりも多く現場を観察すること、武蔵の例でいえば、高台から敵の動向を観察し、チャンスを見いだすや否や、即座に攻撃を仕掛けるということです。この時点で敵は武蔵の行動を観察できていないため、情報面で不利な立場にあります。これでは、勝つべくして勝つことは不可能です。

おそらく、武蔵の決闘相手は、剣術自慢の猛者であり、闘いとは力と力のぶつかり合い、剣術の腕で決まると思い込んでいたのでしょう。彼らは約束された時間と場所をキチンと守り、フェアな条件の下で決闘を望んでいたのです。これはまさにPDCAを回そうとしていたと捉えることもできます。

一方の武蔵は、剣術の腕はさることながら、闘う前に勝利することを心がけていました。つまり、OODAループを回すことで、敵よりも情報面、心理面で優位に立ち、そのうえで剣術では互角か場合によっては互角以上だったかもしれない相手に攻撃を仕掛け、勝つべくして勝つことができたのです。

両者の違いは、情報収集を初期の段階で行い、そのうえで即座に決断し行動していたのか否かという点にあります。

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