PDCAより「OODA」が日本で導入しやすい理由 「宮本武蔵とキーエンス」は戦わずして勝つ
現代の軍事戦略である機動戦の特徴も、まずは戦地に少数の特殊部隊を送り、敵の状況を観察し、逐一、司令部に連絡をしながら、好機を探し、一瞬のチャンスをつかむと、待機していた部隊がそこを高速で攻撃するという点で共通しています。これには観察、情勢判断が大きな役割を果たしているのです。
キーエンスの高収益の秘密
これは当たり前のことで、ビジネスの現場ではどこでもやっていることだと思われるかもしれません。確かに、OODAの概念は非常にシンプルなもので、説明を受けると常識的な感じがします。しかし、これを組織的に回していくのは決して簡単なことではありません。OODAは、シンプルだけれども簡単ではないのです。
現在、私はOODAをビジネスの現場で回すいくつかの興味深い取り組みについてヒアリング調査をしています。その成功事例の1つとして、キーエンスの取り組みを紹介しましょう。
センサーメーカーであるキーエンスは、きわめて高収益であることで有名です。この高い収益性を支える主要な要因の一つが、同社の高い開発力にあります。ヒット商品を数多く開発することで、同業他社が模倣する前に稼ぐというビジネスモデルなのです。
OODAの視点で見たとき、キーエンスの強みは、営業情報ではなく、開発情報を迅速に収集する仕組みを整備している点にあります。開発情報とは、ある製品が顧客の現場でどのように使用されているのか、その課題、問題点は何なのか、といった具体的な製品の使用状況に関する情報です。
そのため、キーエンスでは、企画立案担当者が、直接、さまざまなユーザーを訪ね、現場を実際に観察するところから始めます。そして、現場を観察し、そこで課題、問題点を情勢判断します。これが、新製品開発のネタになるのです。
たとえば、同社のヒット商品「BIOREVO」という蛍光顕微鏡も現場の観察から生まれました。
生物学、医学の研究で使用される蛍光顕微鏡は、細胞の特殊な試料で染色し、発した光を観察します。ここで発せられる光は非常に微弱であり、従来の蛍光顕微鏡では、暗室でしか観察することができませんでした。また、顕微鏡をのぞいて観察するため、同時に観察することができるのは一人だけでした。これが蛍光顕微鏡の開発情報になります。
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